2021/05/06
取締役が備える知識や経験などを一覧にする「スキルマトリックス」が注目されている。国内の主要約300社の調査で、スキルマトリックスを公表している企業は4分の1以下にとどまることが分かった。各社の一覧の内容からは、財務や企業経営など重要な専門スキルを社外取締役に頼りがちで、自社での人材育成力が弱い日本企業の課題も明らかになった。
スキルマトリックスは欧米で進む情報開示手法で、取締役がどのようなスキルを備えているかを「見える化す」る。会社の戦略や課題に照らして取締役の選任や構成が適切かどうかが一目でわかり、取締役会の実効性を評価する物差しになる。
企業統治助言会社のプロネッド(東京・港)が2月、東京証券取引所1部上場で売上高5000億円以上の296社を対象に開示状況を調べた。
調査によると、スキルマトリックスを開示していたのは全体の23%(67社)にとどまった。非財務情報などをまとめた統合報告書や株主招集通知に記載している例が多かった。
(中略)
今回の調査で、開示されたスキルの項目数の平均は7だった。最小は3で最多は16と、各社でばらつきが目立った。最も多くの企業が示したスキルが「財務・会計」で67社中64社に上った。「企業経営」(61社)、「法律・リスク管理・監査」(59社)、「グローバル経営」(50社)が続いた。
これら4項目のスキルを備えるのは、社内取締役より社外取締役が多かった。
(日本経済新聞 4月26日)
「財務・会計」「企業経営」「法律・リスク管理・監査」「グローバル経営」の4項目のスキルを備える取締役は、社内取締役よりも社外取締役のほうが多い理由は、社外取締役の属性に由来するのではないか。
社外取締役が公認会計士やCFO経験者なら「財務・会計」のスキルに長け、弁護士なら「法律・リスク管理・監査」に長け、上場企業の社長経験者なら「企業経営」「グローバル経営」に長けている。
要は社外取締役に求めるスキルマトリックスを開示し、それらのスキルに合致する人選であることを各取締役の実績を記して示せばよい。再任する社外取締役については任期中の実績と再任の理由を示せばよい。
社外取締役経営者に聞くと「会社の問題点は社内の人間でないとわからない。ともすれば社外取締役の意見は一般論になりがちだ」というが、株主も社外取締役各人の適否をどこまで評価しているだろうか――。
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