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社員の自立がチームの強み サイボウズ青野慶久社長

サイボウズ社長の青野慶久氏は2005年の社長就任後、相次いで実施したM&A(合併・買収)で失敗して会社の再建を迫られた。そこから自社のミッションを「チームワークあふれる社会を創る」と定め、自らもレベルの高いチームワークを実践することを決意する。理想のチームづくりを進める中、たどり着いたのは「100人いたら100通りの働き方がある」という考え方だ。
――リーダーとしてチームを率いるうえで大事にしていることは何ですか。
「メンバー一人ひとりに自立的マインドを植え付けることです。メンバーが自分のやりたいことを見つけ、自立して動くことで最高のパフォーマンスを発揮できるチームになります」
「様々な人事施策を取り入れていますが、多様性を尊重する仕組みのひとつが『働き方宣言制度』です。どんな働き方をするのかを自分で決めてもらいます。『朝にランニングをしたいので出社は10時』『プロ野球を観戦する日は17時に退社する』など様々です。副業も許可しており、『週3日勤務にして他の日は副業』という社員もいます」
(日本経済新聞 2021/4/15)

 サイボウズの青野慶久社長が「メンバーが自分のやりたいことを見つけ、自立して動くことで最高のパフォーマンスを発揮できるチームになります」と述べた。これは至言である。
たとえばチーム力は危機対応に顕著に現われる。事件・事故・災害は対策マニュアル通りに発生してくれない。応援要員が到着するまでは、現場に居合わせたメンバーが最適解を判断して、臨機応変に対応する以外にない。問われるのはマニュアルをベースにした応用力である。
国土交通省東北地方整備局は東日本大震災の経験を振り返って「備えていたことしか、役に立たなかった。備えていただけでは、十分ではなかった」と教訓をまとめている。
危機管理に強く、環境の変化に適応できる体質かどうか。20年近く前のことだが、元皇宮警察本部長・初代内閣広報官の宮脇磊介氏に、危機に強い組織の要件を尋ねたら、宮脇氏は、中国の故事に出てくる「常山蛇勢」(じょうざんだせい)を挙げた。
常山に棲む蛇は、尾を攻撃されると頭で反撃し、頭を攻撃されると尾で反撃し、胴を攻撃されると頭と尾で反撃したという。これを組織の戦法に置き換えたのが常山蛇勢で、宮脇氏は「組織の全構成員が部門と役職の枠を超えて臨機応変に動けることが重要」と強調した。サイボウズが取り組むメンバーの自立もこの故事に通ずる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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