厚生労働省15年度から介護保険サービスにかかる費用を、職員の賃上げなどを除いて抑制する方針だ。特別養護老人ホーム(特養)などに支払う「介護報酬」を一部引き下げ、財政膨張に一定の歯止めをかける。来年10月に予定していた消費再増税が先送りされたため、見込んでいた財源が得られなくなった影響もある。
26日に社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護給付費分科会を開き、介護費用を抑制する方針を確認した。厚労省は来月の衆院選後に見直し案を最終的にとりまとめる。サービスごとの具体的な報酬額は財務省と調整して年明けに決める。介護費は原則3年に1度見直しており、15年度は改定年にあたる。
今回の改定は大きく3つの柱に分けられる。第1の柱は介護職員の賃上げに充てる費用を増額することだ。介護は人材難が続いており、団塊の世代が75歳以上になる25年時点で100万人の人手が不足するとされる。介護職員の平均賃金は月額約24万円と、全産業の約32万円に比べ低く、なかなか人手が集まらない。(日本経済新聞 11月27日)
介護職の処遇問題は一向に解決に向かっていない。しかし、来年4月の介護報酬改定に向けて社会福祉法人の高収益体質がクローズアップされ、なかでも特別養護老人ホームとデイサービスの利益率が10%前後におよんでいることが公表されるにつれ、雲行きが変わってきた。
介護職員たちが勤務先の財務諸表を見たら「本当に人件費の原資が不足しているのか?」。そんな疑問を抱くと思われる社会福祉法人も少なくない。
来年4月の介護報酬改定に対して財務省は改定率をマイナス6%以上と提言し、介護関連の諸団体はいっせいに反発したが、高収益を示すデータが公表されたことや、消費増税の先送りで鎮静化した模様だ。
介護職員の賃金水準の源流に“福祉サービス=ボランティア”という文化めいたものが潜んでいるのかどうか。職員の平均年俸が430万円と業界では高水準の社会福祉法人の理事長は「生活設計が安定しない給与水準では、真心をこめた介護に専念できるとは思えない」と話していた。
現状では、厚労省が賃上げ指導に乗り出すしかあるまい。
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