2021/01/05
国内の労働移動が停滞している。新型コロナウイルスの感染拡大で飲食業などの雇用は縮小。IT(情報技術)や金融など今も雇用吸収の余力がある業種はあるが、求められる知識や技術の違いもあり業種をまたいだ転職が進まない。職業教育への助成など、転職を後押しする政策が求められている。
転職者数は近年、増加を続けていた。労働力調査によると19年は351万人と過去5年間で2割増え、比較可能な02年以降で最高だった。だが20年1~9月は前年比6・8%減で、通年で10年ぶりに前年割れする可能性が高い。
転職市場全体が凍ったわけではない。パーソナルキャリア(東京・千代田)が運営する転職支援サービス「doda」の10月の転職求人倍率(転職希望者数に対する求人数の割合)は、情報・通信が4・89倍、金融は1・75倍で採用意欲は旺盛だ。業界の就業者数(月平均)も、情報・通信や金融・保険は4~10月に前半より2~5%増えている。
(中略)
08年のリーマン・ショック後は、製造業や金融業の人員を流通・サービス業などが吸収した。今回も人余りの飲食などからITなど人手不足の業種へ転職が進めば、需給ギャップを緩和できるはずだが、それを阻むのがスキルの壁だ。
(日本経済新聞 12月20日)
どんな業種・職種でも活躍できるスキルをポータブル・スキルというが、このスキルがあれば、未経験の業種・職種に転じても一定の能力を発揮できる。だが、ポータブル・スキルの持ち主は限られている。すぐれた適用力が必須要件だが、これは先天的な資質で、トレーニングでは身につかない。
コロナ禍で異業種・異職種への転職を余儀なくされる中高年世代は少ないだろう。リーマン・ショックのときにも異業種・異職種に転職する中高年世代が多かったが、ミスマッチが頻発した。たとえば人手不足の介護業界に多くの事務系会社員が転職したが、介護現場への適応は壁が高く、退職が相次いだ。
中高年世代は即戦力であることが求められるため、受け入れ研修もフォーローも手薄で、いきなり現場に放り込まれて右往左往する。そして成果を出せず退職に追い込まれる。同様のムダが今回も繰り返されるのだろうか。
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