2020/11/12
厚生労働省は2日、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)を導入した企業が9月末時点で全国で約20社、対象の労働者が858人であることを明らかにした。制度導入から1年半が経過したが、企業側の慎重姿勢もうかがえる。
高プロは、労働時間でなく成果で評価する働き方で、2019年4月に始まった。勤務時間が長くても割増賃金(残業代)は出ない。研究開発など5職種に携わる年収1075万円以上の労働者が対象となる。
厚労省によると、20年9月末時点で、コンサルタントが762人で全体の約9割を占める。他に、有価証券を売買・運用する金融トレーダーやディーラーが59人、アナリストが30人など。導入が伸び悩む背景には、年収や対象職種が限られていることに加え、長時間労働になりがちなことがあり、企業側に課される「健康管理時間の把握」といった負担が指摘されている。
過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士は「対象者が健康に働いているかどうかは関心が高く、厚労省は導入件数だけでなく、健康管理時間などの実態も公表すべきだ」と指摘する。
(毎日新聞 11月3日)
年収1075万円以上の収入があれば、長時間過重労働を割り切って受け入れるのではないか――傍目にはそう見えるかもしれないが、当事者にとっては、高度プロフェッショナル制度は“定額働かせ放題”に流れ、心身の限界を超えかねない。
高収入も健康には代えられない。ましてコロナ禍で健康意識は高まった。医療機関は外来受診患者が減って収入減に直面しているが、患者の過剰受診が是正され、セルフメディケーション重視へと移行しているが、これは健康意識の高まりでもある。
年収1075万円以上を得るには人一倍のハードワークが必須だが、ハードワーカーはひとたび体調を悪化させると、多くの場合、療養を経てもペースダウンしたままで、元のハードワークには向かわない。健康価値を身をもって認識し、健康重視へと転換する。
高プロ対象者を増やすのなら、健康との両立を図らなければならないが、長時間過重労働と健康はトレードオフの関係だ。健康経営の推進が問われている時世に、高プロの導入は容易でない。
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