2020/11/01
パソナグループは地方での雇用創出を後押しする取り組みを始める。ANAホールディングスやコクヨ、新潟県などと10月に新団体を設立する。地方の遊休施設をオフィスに整備するほか、都市部に勤務する社員が地方でも働ける柔軟な勤務体系なども議論する。パソナは淡路島に本社機能を移す方針。人口減など自治体が抱える課題を官民が連携し解決を目指す。
場所や時間を問わない働き方の提案に向けて「ハイブリッドワークライフ協会」を10月に立ち上げる。日本マイクロソフトや西松建設などを含めた13社のほか、鳥取県や神戸市など13自治体が参画する。当初は約30団体で構成する予定だ。兵庫県淡路市に事務局を置き、理事長に山田哲二前京都府知事が就任する。
参加企業の知見を生かし、全国の遊休施設の有効活用を目指す。例えば地方が持つ廃校を建設会社や通信会社などが連携して働く拠点に整備する。JTBなどは仕事や休暇を組みわせた「ワーケーション」の取り組みなどを通じ、都市と地方の人の移動を活性化する役割を担うという。
(日本経済新聞 10月22日)
地方創生の大きな課題は雇用機会の創出であることは、たびたび指摘されてきたが、決め手になるような解決策はなかった。
多くの地方で有力な雇用の受け皿になっているのは医療・介護業界で、高齢化の進行で雇用需要は高まっていく。だが、この業界で一定以上の収入を得るには国家資格が必要だ。しかも医療・福祉に関わる仕事に志をもっているのなら激務にも対応できるが、やむなく就職すると短期間で離職してしまいかねない。そういうケースは後を絶たない。
そこで、たえず募集をかけることになるのだが、医療・介護は労働市場では特殊な業界と見られ、他に選択肢が見つからない限り、なかなか就職先の対象になりにくい。地方には就職先がないという状況がつづいている。
ところがコロナ禍でリモートワークが普及すれば、業種や職種によっては、本社や事業所を地方に配置しても支障が出ないかもしれない。パソナグループが本社機能を淡路島に移転して従来どおりの経営できれば、後につづく企業も出てくる。
パソナグループの取り組みは社会実験でもある。地方に人口が分散すれば、廃校の危機にある学校も存続できるようになる。学校は病院と同様に地域の重要な拠点で、閉鎖は地域の衰退を招く。バラマキ政策ではない持続性のある地方創生策が、ようやく現実味を帯びてきた。
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