2020/08/18
そろそろ承継の準備を始めないといけません」。精密ガラス部品製造を手掛ける鬼塚硝子(東京都青梅市)の鬼塚好弘社長(78)は2014年、東京都中小企業振興公社の異業種交流会で、同公社幹部に諭された。
創業者社長として経営や製品づくりを引っ張り、当時も70歳をとうに過ぎていた。ただ「毎日様々な課題に迫られる社長業を任せるなら身内しかいない」とも感じていた。半面、子どもは長女の睦子(ちかこ、47)氏はじめ3人姉妹で同社の従業員経験はなかった。
睦子氏は将来の後継も想定して高等専門学校に進み、卒業後非鉄金属大手などに就職。鬼塚硝子に転職する話もあったが、当時新たに従業員を雇う余裕がなく立ち消えに。結婚、出産もあり同社に就職する機会を逃したまま時が流れていた。
好弘長は後を継がせる意向を公社の助言後まもなく睦子氏に伝えた。ただ、準備期間が必要とみて、入社前に経営ノウハウを学ぶ公社の後継者塾に入ってもらった。
(日本経済新聞 8月12日)
鬼塚硝子は先進的な企業である。2012年に東京商工会議所が主催する第10回「勇気ある経営大賞」で優秀賞を受賞した。東商のホームページによると、勇気ある経営大賞の対象は「過去に拘泥することなく大きく経営の舵をきる決断を下し、 “勇気ある挑戦”をしている企業」である。「大きなリスクに挑戦したか」「高い障壁に挑んだか」「常識の打破に挑戦したか」「高い理想の追求を行ったか」について、 ①挑戦に向けた背景や動機②挑戦の内容③挑戦が生んだ成果―の3つが評価される。
こうした賞を獲得する企業のトップはプレイングマネージャーが多く、事業承継の必要性を認識していても、ついタイミングを逃してしまいがちである。まして創業社長の場合、社長のポストを承継されたという経験をもたないことも、タイミングをつかみかねてしまう理由のようだ。
国が 「人生100年時代」「生涯現役」というアドバルーンを掲げても、会社経営者には当てはまらない。変化対応の巧拙で盛衰が決まる会社経営には、経営陣の世代交代が必須である。一概にはいえないが、経営者は50歳を過ぎたらバトンタッチの準備に入ったほうがよい。
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