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休業飲食チェーンが副業あっせん スーパーなどに従業員派遣

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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休業中の飲食チェーンが、スーパーマーケットなどに従業員の派遣を始めている。休業が長期化するなか収入が減少している従業員を支えるのが目的で、企業が自ら副業のあっせんに乗り出した形だ。在宅勤務の増加などで混雑するスーパーは人手不足に拍車がかかっており、業界を超えた人材のやりくりが雇用維持の新たな方策になるか注目されそうだ。
「いらっしゃいませ」。イオン傘下の食品スーパー「まいばすけっと」の東京都大田区内の店舗でレジに立つ佐藤亜希子さん(24)は、大手居酒屋チェーン「塚田農場」などを展開する「エー・ピーカンパニー」(東京都)の社員だ。
(中略)
傘下の飲食チェーンを全店休業中のエー社は、休業当初、社員の給与を全額補償していた。だが、休業が長期化するなか人件費の負担は重く、補償額を6割に減らさざるを得なくなった。そのため、従業員の減収を補おうと副業の紹介に踏み切った。エー社の担当者によると、休業を決めた直後からスーパーや大手物流会社、宅配ピザチェーンなどから従業員受け入れの申し出が相次いだという。約850人の社員のうち約半数が希望し、現在計13の受け入れ先で勤務。5月以降は約3500人のアルバイトにも対象を広げ、約50人が他社で就業中だ。(毎日新聞 5月13日)

飲食業が社員を小売業に派遣する例は、人員過剰の企業と人員不足の企業が社員を融通しあう仕組みで、いわばシェアリングエコノミーの一環である。

飲食業と小売業はともに消費者対象の店舗ビジネスなので、親和性も高い。同業種内での社員の融通は簡単ではないだろうが、異業種なら連携しやすい。

しかも派遣される社員は収入の確保に加えて、他流試合を経験できる。迎え入れる企業にとっても、人員確保だけでなく、自社が保有していないノウハウを導入できる。人材交流のような取り組みともいえるだろう。

この仕組みが普及すると、余剰人員が発生しても希望退職や派遣切りなどを実施せずにすむ。まさに“リストラなき雇用調整”が可能になる。受け入れ先にとっても、戦力として期待できる人材を起用できる。

人材紹介会社のなかには、新規事業として検討を始めたところがあるかもしれない。

雇用維持と人員確保の双方をかなえられる仕組みとして普及するだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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