2020/05/12
働く高齢者の増加に伴い、小売業やサービス業で60歳以上の労働災害が急増している。60歳以上の就労が広がる一方で、建設業や製造業に比べると安全管理体制の法的な縛りが緩いことが背景にある。3月末に改正高年齢者雇用安定法が成立し、70歳までの就労が現実になる今後、他産業並みの安全確保が求められている。
「60代の男性店員が脚立から落ちて後頭部を打ったと聞いて、すぐ動かねばと思った」
関西地域でスーパーマーケット154店を展開する平和堂。健康サポーターセンターの松蔦環氏はこう話す。男性は無事だったが、ぬれた床での店頭食品売り場でのやけどや切り傷など、2018年に359件の業務上災害が起きている。
小売業は今や60代の代表的職場だ。総務省の労働力調査年次統計によれば、60歳以上で「卸売業・小売業」で働く人は19年に168万人と、5年前に比べ28万人増え、全業種で最多となった。
その一方で、小売業やサービス業で労働災害が急増している。
(日本経済新聞 5月1日)
昨年10月13日、スポーツ庁が公表した「2018年度体力・運動能力調査」結果によると、60代後半の女性の体力テスト合計点が過去最高記録を更新するなど、高齢者の体力は向上しているという。
いまの60代は見た目も若く、いくつかの調査で70歳までは働きたいという意向が強いことが示されている。生涯現役を推奨するような機運もある。
スポーツ庁の調査結果に現れた高齢者の体力向上は、日常生活には反映されるのだろうが、ビジネスの現場ではそうでもないようだ。高齢者は見た目が若くとも、あくまで高齢者である。
いくら本人が「若い者には負けない」と意気込んだところで、「寄る年波」には勝てない。60代の雇用には労働災害対策が枢要な課題だが、同時に雇用される側にも体力の衰えに対する自覚が強く求められる。
60代は若手社員の手本になるべきなのに、逆に足手まといになってしまったら、何とも惨めである。
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