2020/03/27
大手広告代理店「博報堂」の嘱託社員だった福岡県内の女性が無期雇用になる権利を得る直前に雇い止めされたとして、同社に社員としての地位確認などを求めた訴訟の判決が17日、福岡地裁であった。鈴木博裁判長は雇用を継続した上で、雇い止め翌月(2018年4月)から判決確定日までの賃金と年2回の賞与を支払うよう命じた。
訴状によると、女性は1988年に新卒採用で博報堂九州支社に嘱託社員として入社。1年契約の雇用契約を29回更新し、18年3月末まで経理などを担当してきた。
13年4月施行の改正労働契約法は、同月以降に結んだ有期労働契約が通算5年を超えれば、無期労働契約への転換を申し込む権利が得られる。女性は18年4月に無期雇用転換を申請できる予定だったが、同社は17年12月、次年度以降の雇用契約は更新しないと伝えた。
女性側の井下顕弁護士は「非正規雇用の人を励ます判決だ」と評価。博報堂は「判決文を読んでいないのでコメントできない」と話した。
(毎日新聞 3月17日)
労働基準法に違反する事案には、雇用側の無知による場合と労基法を軽視している場合がある。共通しているのは、雇用側と従業員側との力関係が背景にあることだ。
人手不足を背景に雇用側と従業員側との力関係が逆転しつつあるとか、労働基準法は従業員に優しすぎるなどの意見を経営者から聞いたことがあるが、やはり力関係は雇用側のほうが上である。
極端にいえば、雇用側は従業員の生殺与奪権を握っている。だからこそ優越的地位を乱用しないように法令遵守を徹底しなければならないのだが、「企業の論理」に合致するとは限らない。
多くの企業にとって労基法の縛りは重荷なのだ。たとえばダイバーシティ経営が提唱されても、重荷であることに変わりない。重荷でない企業には、真っ当な労使関係が定着しているが、社長や労務担当役員に強権好きの人物が就任すると変化しかねない。
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