2019/08/06
大企業を辞めて起業したり、ベンチャーに就職したりする若者が首都圏で増えている。若手社員の仕事に対する意識は時代の流れとともに変化し、永年勤続を名誉とする風潮が薄れてきている。首都圏にはビジネス機会が多いことも、起業の背中を押している。成功は約束されていないが、自らの可能性にかけて生き生きと働く若者らを追った。
「面白いけど、うちでは事業化できないね」。山地瞭さん(27)は楽天に勤めていた約2年前、音楽スタジオ予約システムの新事業を役員にプレゼンテーションしたが、市場の小ささが課題とされた。成功する自信があり「事業化しないまま後悔したくない」。プレゼン後、数カ月で退社してスタジオル(横浜市)を起業した。
(中略)
マイナビが2016年から18年の間に転職した人に実施したインターネット調査で、「転職は前向きな行動」と回答した割合は20代男女がそれぞれ70%を超えた。全世代のなかで最も高かった。かつては転職希望の若手社員は「とりあえず3年働け」と言われることも多かったが、現在は転職することを前提に入社する新卒社員も増えている(日本経済新聞 7月27日)
「石の上にも三年いれば暖まる」という教えは、アイデアの事業化を優先したい若手社員には現実的でない。我慢を説く精神主義の拒絶とは違う。ITビジネスでは、いまの新モデルは3年後には旧モデルに後退しかねず、3年も待てないのだ。
終身雇用の終焉に加えて、事業のスピード化が求められる以上、第一希望で入社した大手企業を数年で辞める社員が続出しても不思議ではない。むしろ自然な現象である。会社は退職を防ぐ手立てよりも、退職後の連携を講じたほうが現実的だ。
ましてマイナビの調査が示すように、20代男女の70%超が「転職は前向きな行動」と考える時代になった。げんに転職によってステップアップを図っている例は数多い。しかも、たとえ一流企業に入社しても、みずから望まない転勤を繰り返すような人生を負け組とみなす風潮もあるという。
会社に提出するキャリアプランに転職は記載しないだろうが、胸の内で描くキャリアプランには転職が盛り込まれているものだ。
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