車両のリストラが始まりましたよ――。鉄道関連メーカーの幹部が取材中に、浮かぬ顔でこう話した。続きを聞くと、鉄道事業者が1編成あたりの車両の数を減らしているという。10両編成を8両編成に、2両編成を1両編成にするといった具合だ。
労働人口の減少や少子化を受けて、通勤や通学に使う人は今後、減少傾向が続く見通しだ。鉄道事業者は対応を迫られているが、対応策としては運行本数自体を減らすか、編成あたりの車両数を減らすという選択を迫られる。
冒頭の幹部は「持ちこたえられるところまでは運行本数の削減に手を出したくないのが本音だろう」と分析する。利便性が損なわれる運行本数の削減は地域や利用者に対するインパクトが大きく、住民の反発を招きかねないからだ。
1編成あたりの車両数の削減は1度で運べる輸送人員自体は減少するものの、そもそも利用者が減少しており不便さを感じる人はそう多くない。そのうえメンテナンス費用や運行コストの削減など、得られる効果も小さくないとの見立てだ。実際、西日本の一部の私鉄では総両数の減少が始まっている。(日経産業新聞8月21日)
大都市で毎日のように満員電車に乗っているとあまり意識しないが、実は、日本の鉄道車両の需要は減少している。通勤・通学で主に鉄道を利用するのは大都市圏だけで、地方では電車に乗れば、次に止まる駅は隣町であったりする。地方の人口減少に伴い、車両の需要も減少している。
2012年度に国内で生産された車両は11年度比12%減だった。13年度は1665両と12年度比6%増となったが、国内だけを見れば横ばいで、伸びたのは輸出だ。
いきおい、日本の車両メーカーの期待は、国内市場よりも海外市場に向く。米国への新幹線輸出には業界も力を入れているが、今後、インフラ投資を拡大する新興国向けの市場は、成長の余地が大きく期待も大きい。
しかし、日本の鉄道輸出には規格の壁が立ちはだかる。鉄道の分野で主な国際標準規格を抑えているのはEUだ。筆者は、かつて自民党のシンクタンクで国際標準化の国家戦略の検討を行ったことがあるが、その当時から鉄道、電力、水道などの社会インフラの国際標準を日本が獲得することはハードルが高かった。
アジアでは日本の影響力もそれなりにあるのではと思われがちだが、かつて世界中に植民地を持っていた欧州の影響力は強い。新興国は法律も工業規格も旧宗主国の制度を踏襲していることが多いからだ。日本の社会インフラの輸出促進には、この国際標準の壁を突破する国家戦略が必要だ。
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