2019/07/25
働き手の側も企業を踏み台の一つととらえる人が増えた。子育ての写真を共有するスマートフォンアプリを運営するタイマース(東京・渋谷)の執行役員、栗城良規(34)は今の勤務先が4社目。コンサルティング大手と2つのITベンチャーを経て今に至った。
転職の一つ一つが「経営とITの両方に強くなる」という計画的なものだ。今の会社を辞めるときは「自分で起業する時」という。
ヤフーは「モトヤフ」と呼ぶ同社OBの組織を設け、オフィスの部屋を使うことも認める。スタートアップ企業とフリーランスの間で仕事を仲介するエニィクルーを起業した赤羽貢(41)は6月、両社の交流会を開いた。終了後、元同僚と声を掛け合った赤羽は「後ろめたさなんて全く感じないね」と言って笑った。
ヤフーはOBとつながる協業と復職の可能性を探る。執行役員の湯川高康は「優秀な人には残ってほしいが、辞めた人が悪という考え方では会社は成長しない」と語り、社内ではできない体験を積める外部との出入りも歓迎する。
転職で能力と報酬を積み上げる「出世魚」のような働き手と、彼らの去る日を覚悟しながら今の力を生かそうとする企業。日本の職場で新たな労使の関係が広がってきた。(日本経済新聞 7月17日)
同じ会社のOB同士がビジネスで連携する例は昔から珍しくないが、一般に会社は退職者と連携したがらない。どこかにムラ意識が宿っているのだ。
メーカー出身者が古巣の販売代理店になったり、広告代理店出身者が制作会社として元の部署から業務を請け負ったりする例は多いが、あくまでアウトソーシング先に過ぎない。対等の関係で新事業を仕掛けるとなると、「現」「元」の間に心理的な壁が発生してしまうようだ。
だが、出戻り社員が当たり前になるにつれ、OBをネットワーク化して経済圏を形成すれば、新たな知見を入手できる。「現」「元」の連携は、傍目にはダラダラとつづく“腐れ縁”に見えなくもないが、互いにプラスになるのなら連携は進み、会社の版図が拡大する。
こうした関係が拡大すれば、社員も後ろ髪を引かれるような思いをして辞めずに済み、退職後も出身会社を有効に活用できる。
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