2019/07/24
企業が転勤制度を見直し始めている。AIG損害保険は転勤が多い保険業界では珍しく原則廃止した。カゴメやキリンビールは転勤を事前に回避できたり、希望地域で働けたりする仕組みを導入した。転勤を経験する人は年60万人に上る。親の介護や育児と仕事との両立を迫られる現代の会社員にとって転勤の負担は重くなっている。不公平感を生まずに人材をつなぎ留めようと企業側は試行錯誤だ。
AIGは1月、会社都合による転勤を原則廃止した。それまでは営業など約4千人の社員が3~5年ごとに全国を異動していたが、社員の75%は転勤を希望していないという。「しばらく転勤がないように考慮してほしい」。同社では近年、介護や育児を理由にこう訴える社員が増えていた。
今後はその全員が2012年9月末までに好きな地域で働けるようになり、その後も本人が望まない限り転勤はない。(日本経済新聞 7月17日)
先ごろ、大手医薬品メーカーの地方営業所長と話す機会があった。50歳の方で単身赴任。妻子はさいたま市に住んでいる。「私は転勤族ですよ」と話す所長は、入社して営業部門に配属されて転勤を繰り返し、本社勤務をはさんで、いまの営業所は7回目の転勤先だという。
「うちの会社では、平均して3年単位で転勤が繰り返されます。転勤辞令が出るのは2カ月前で、転勤先の住居は会社の借り上げマンションです。転勤の可否や転勤先の希望など個人の事情は考慮されません。二重生活のうえに、家族のもとに帰るので往復の交通費も結構な額に膨らんでしまいます」
まるで駒のように配置されつづける会社員生活にも見えるが、どう受け止めているのだろうか。
「私の年代だと、転勤は終身雇用の交換条件みたいなもので『そういうものだ』と割り切る人が多いでしょう。ただ、いま私が新卒の社員なら、こんなに転勤したくありません。家族同伴の転勤なら子供は転校を繰り返すことになり、転校を避けるなら単身赴任。家族のあり方として不自然ですよね」
いまの20代には出世志向が弱まっているから、人材の流出を防ぐには転勤制度の見直しが欠かせない。
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