Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

介護施設、高齢者が「助手」

ono2019061902

人手不足が深刻な介護業界で、高齢者を活用する動きが全国で広がってきた。25を超える都道府県でベッドメークなど補助業務に特化した仕事を担当する「助手」として採用されている。介護福祉士など資格を持つ職員には本来の業務に集中してもらう狙いだ。介護は2025年度まで55万人の人手確保が必要とされており、元気な高齢者の活躍が欠かせなくなった。

「介護士などの専門職が、より利用者と接する時間を増やせるようになった」。介護大手、ツクイで東京都西部の多摩北エリアを管轄する細野雪枝エリア長はこう利点を話す。同社は17年から介護助手の受け入れを始め、3月末時点で263人が働いている。このうち65歳以上が25%の67人、60歳以上だと35%の91人がいる。

介護助手に明確な定義はないが通常、掃除やベッドメーク、食事の配膳など介護の周辺業務を手掛ける職員を指す。1日3時間、週3日程度で余裕を持って勤務するケースが多く、施設から給与が出るのが一般的だ。(日本経済新聞 6月7日)

老後の生活資金確保と健康の維持、この2つの課題に取り組むには就労がいちばん適しているようだ。70歳が過ぎてから何もしない自由を選択する人もいれば、社会参加を望む人もいる。

後者を介護現場に招聘する取り組みで先行している団体に老人保健施設協会がある。上記の記事によると、協会は三重県で県の基金を活用して介護助手を募集し、2018年10月時点で約120人の介護助手が介護保険老人保健施設で働いている。ほとんどが60歳以上である。

元気高齢者が要介護高齢者をサポートするという構図は、他に担い手がいないことが顕著になって、やや痛々しく見えなくもないが、年齢が近ければコミュニケーションを取りやすいという利点もある。

実際、介護事業者のなかには、外国人労働者の雇用でも必要スタッフ数に到底届かないと判断して、80歳までの雇用に入った例がある。介護補助業務なら経験がなくても対応できるが、テキパキと動けるかなど適性が問われるので、そう簡単に元気高齢者の活用が進むとは思えない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。