「ニーマルサンマル」と今年よく聞く。政府が定める女性登用目標「2020年までに指導的立場に就く女性比率を30%に」の略称だ。安倍晋三首相が女性活躍推進を国内外で強くアピールした効果もあり、今年は大手企業で女性役員の就任が目立つ。中央官庁では女性幹部が相次ぎ誕生している。登用を進める狙いは女性の潜在力を引き出し、社会を活性化することだ。
今回の調査では数値目標導入について、賛成が61%に上った。その理由は「働く女性にとって励み」がトップ。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、名目上は男女格差がなくなったはずだ。だが企業管理職に占める女性比率(13年)は部長相当5・1%、課長相当8・5%といまだ低迷する。目標導入を契機に現状改善へ動き出すことを期待しているようだ。
反対派も39%に上る。一番の懸念は「女性の評価が甘くなる」。自由回答でも「男性に対する逆差別」「性別ではなく実力を見るべきだ」などが寄せられた。ただ管理職に必要な能力はスポーツのように数字で優劣を付け難い。男性同士が一つの管理職ポストを争う場合も同様の懸念は残る。(日本経済新聞8月10日)
女性の管理職比率に数値目標を置くことについては賛否両論だが、女性の社会進出をより支援する施策が必要であることについては社会的なコンセンサスが取れている。問題は、女性の社会での活躍を示す指標として「指導的立場に就く比率」がどれほど適切かということと、数値目標を達成すること自体が目標となって実態を伴わない数字作りが行われるのではないかという点だ。
女性の社会進出が進めば、その結果として女性が「指導的立場に就く比率」が高くなるのは事実。その意味では、指標として意味を持つ。しかし、女性が「指導的立場に就く比率」を高めれば、女性の社会進出が進むかといえば、必ずしもそうとは限らない。
女性の管理職比率を短期間に上げるには、女性向きの管理職ポストを新設することだ。もとも女性が多い職場であれば、そこの管理職の数を増やし女性を登用することは難しいことではない。ただ、それで女性の社会進出が拡大したことになるのかどうかは定かではない。
女性の「指導的立場に就く比率」を上げることは無意味ではないが、数値だけを目標するのではなく、その実態にも目を向ける必要がある。
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