2019/05/30
政府は副業・兼業を推進するための環境整備を積極化させる。企業が副業を認める際にモデルとなる就業規則の普及に取り組むほか、労災保険の拡大など労務管理のルールも見直す。副業を希望する人は年々増えているが、制度の不備などを指摘する声は企業側に多い。企業の懸念を解消するため、政策を総動員する構えだ。
政府は6月にもまとめる成長戦略の柱の一つに、副業や兼業をしやすい環境づくりを掲げる。日本経済は少子化により、人手不足が深刻化している。2018年には15~64歳の「生産年齢人口」が約754万人となり、総人口に占める割合は59.7%と1950年以来最低を記録した。副業や兼業の推進派働き方の多様化に並行して、企業側に人材の有効活用を促す狙いがある。
安倍晋三首相は4月に開いた中途採用・経験者採用協議会で副業や兼業について「夏の成長戦略の決定で方向性を示したい。多くの新たな可能性を求める人たちがその道に進んでいくことができるようにするものだ」と述べ、関係閣僚に具体策の検討を急ぐように指示した。(日本経済新聞 5月23日)
副業で稼いでいる給与所得者の代表的な例は大学教員である。副業の収入源は講演料、印税、役員報酬などで、数年前に有名私立大学の経済学部教授(40代後半)に収入を尋ねたら「本給が年収1200万円、副収入が800万円」。副収入の半分以上が役員報酬だという。
この教授はいくつかの企業の社外取締役を務めたり、ベンチャー企業の顧問を務めたりしていた。会社員のように毎日9時から午後5時まで勤務時間に拘束される就労環境ではないので、お呼びがかかれば結構な額を稼げるのだ。節税対策に副業用の株式会社や有限会社を設立している例もある。
同様の勤め人に大手シンクタンクの研究員が挙げられる。会社員としての縛りがあるから大学教員ほどではないが、副収入の多い職種である。
ただ、大学教員もシンクタンク研究員も、本業に関連する業務から副収入を得ているため、副業に従事しているという認識はないだろう。他業種の会社員が日中、社内のデスクで出版社から依頼された原稿を書いていたら咎められるが、大学教員やシンクタンク研究員にこの“就業規則”は当てはまらない。
政府が副業の推進に政策を導入するのなら、就業規則から副業禁止事項を削除させ、社員を解放してあげることだ。終身雇用を保証できないのなら、副業を解禁して収入源を広げてあげないと、社員は副業を解禁した企業に流れてしまう。
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