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医師残業「年1860時間」提示 働き方改革の報告書案 厚労省

ono20190322

厚生労働省は13日、医師の働き方改革に関する有識者検討会に、一部医師の残業時間の上限を「年1860時間」と記した報告書案を提示した。一般労働者の上限「年720時間」をはるかに上回る時間を容認する。月内に決定し、改革は平成36(2024)年から運用される。
検討会は29年8月に設置され、20回の会合を重ねてきた。今年4月から働き方改革関連法案が施行されるが、医師は適用を5年間猶予。新しい改革でも期限を明記し、その間に激務とされる医師の労働時間を一般労働者に近づける。
報告書案ではまず、「わが国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられている。よい医療を持続させるためには、現状を変えていなくてはならない」と強調した。

残業の上限規制については、一般の勤務医、地域医療に従事する医師、研修医の3つに分けて記載。「現状において年間3千時間近い残業をしている医師もいる」として、急激な労働時間の削減が医療の提供に悪影響を及ぼすことを懸念した。
特に救急救命を担う機関、在宅医療に積極的な役割を持つ機関など、客観的な要件を整理した上で、地域医療については「年1860時間」の上限を提案した。
(SankeiBiz 3月13日)

この報告案について、日本経済新聞(3月14日)は「医療現場の混乱を避けたい医師会などは厳しい残業規制に難色を示している」と書いているが、その医師会の意見に、病院勤務医の団体である全国医師連盟は難色を示している。経営者と勤務医の意見が相反するのはやむをえないが、この問題には医師数に関する認識の相違も影響している。

厚生労働省が医師数は絶対数が不足しているのでなく、診療科と地域によって偏在していると主張しているが、全国医師連盟の主張は絶対数の不足である。この議論はいまにはじまったわけでなく、いっこうに決着がつきそうにない。
さらに、この日経記事の文言で注目したいのは「残業規制に難色を示している」理由が「医療現場の混乱を避けたい」ことだ。患者の健康と医師の健康はどちらが大切なのかという優先順位をつける問題ではないが、10年以上にわたって米国でプロボディーガードとして活動した知人の意見を思い出す。

「災害発生時に、我が身の危険をかえりみずに被害者の救済に飛び込んで命を落としてしまう行動は、たしかに美談である。しかし、自分も犠牲になれば二次災害になって、災害を拡大してしまう。人の命を救う時には、まず自分の命の安全確保が大前提である」
医療現場で何を優先するかはケースバイケースだろうが、経営者側と勤務医側が公開討論をすれば、予定調和色も漂う厚労省検討会とは違って、核心に迫れるのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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