2019/02/20
日産自動車と官民ファンドの問題を契機に役員報酬の在り方に関心が高まっている。
日本企業の役員は社内からの登用が一般的だ。企業経営もトップダウンとボトムアップで運営され、業績の成果配分も従業員との一体感を大切にしている。そんな背景から役員報酬制度も従業員給与の延長線上で設計されている。
欧米のようにプロ経営者がその価値を高額報酬に求め、インセンティブとして設計されている制度とは異なる。その結果、日本の役員報酬は欧米に比べて低い。報酬の構成も従業員の月給にあたる基本報酬の割合が高く、年次賞与と在任中の貢献度に応じた報酬である中長期インセンティブの割合が低くなっている。
グローバル競争で勝ち抜くためには国籍を問わず優秀な経営者人材を確保する必要がある。そのためには役員報酬をどう改革すべきか。
(日本経済新聞 2月13日)
役員報酬の基準を考察する場合、グローバルスタンダードという面妖な概念を持ち出して、欧米トップクラス企業の役員報酬と比較対照して「日本は低い」と評価されるのが通例である。欧米の水準が妥当かどうかという検討は省かれている。
デロイト トーマツ コンサルティングが発表した「役員報酬サーベイ(2017年度版)」によると、東証1部上場企業の役員報酬額の中央値は、会長5743万円、社長5435万円、副社長4399万円、専務3780万円、常務3009万円だった。
この報酬額は欧米と比較さえしなければ低くはない。よほどの贅沢に走らない限り、余裕のある生活を送れるし、老後の蓄えにも不安が生じない水準だ。
だが、グローバル人材を獲得するうえでは欧米企業との争奪戦になるので「低い」と評価されてしまう。よほど強欲な人物を除けば、経営者人材は社会的な使命の追求など高い目線で業務に当たっている。グローバルスタンダードに幻惑されるにはおよばない。
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