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スバル、残業代未払い7.7億円 過労自殺から判明

20190201

自動車大手スバルが2015年から17 年にかけて、社員3421人に計7億7千万円の残業代を払っていなかったことが、24日わかった。16年に男性社員が過労自殺し、その後の社内調査で昨年1月までに判明した。スバルはこれまで1年間にわたり問題を公表しておらず、企業姿勢が問われる事態だ。
24日に男性の遺族の代理人が会見し、男性に残業代の未払いがあったと説明。さらにスバルは朝日新聞の取材に対し、未払いが多数の社員に広がっていたと明らかにした。
代理人によると、16年12月、車両工場の群馬製作所(群馬県太田市)の総務部に勤務する男性社員(当時46)が、長時間労働や上司の激しい叱責(しっせき)が原因で過労自殺した。スバルによると、同製作所の社員数人に残業代未払いがあったとして、太田労働基準監督署から17年7月に同製作所が労働基準法違反で是正勧告を受けたという。
こうした中で、同製作所では社員の残業時間を把握できていないことが判明した。そのためスバルは17年末、社内全部門の非正規を含めた社員1万7359人について、15年7月から2年間の未払い残業代の有無を調査。その結果、残業時間の記録は社員の自己申告だけで、パソコンの使用や出退勤の履歴などとは照合されず、過少申告が常態化していたことがわかった。
(朝日新聞デジタル 1月24日)

社員の過労自殺が起きなければ、スバルの未払い残業代問題は発覚しなかっただろう。いまだに未払い残業代が潜んでいた要因は、スバルに限らず、会社への自発的服従にある。長時間労働是正の方針に対して、業務が効率化されなければ、残業時間の過少申告で取り繕う以外にない。
しかし、過少申告は昭和の時代から多くの企業で常態化していた。残業時間を正確に申告したら上司に過少申告への修正を命じられる例は、ごく普通の光景だった。超過勤務分はタダ働きさせたいという会社の意思が、経営幹部から各部門長へと感染しているのだ。
やがて社員が自主的に過少申告に向かう忖度の連鎖を引き起こし、過少申告を疑問に思っていた社員も無自覚になってゆく。
労働時間削減の大号令には、働き方改革を“過少申告改革”に変質させてしまう落とし穴も潜んでいる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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