Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

日立も技能実習不正か 目的外の職場に配置の疑い

日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)で、一部のフィリピン人技能実習生が、目的の技能が学べない職場で働かされている疑いがあることが分かった。技能実習制度を所管する法務省は7月、技能実習適正化法に違反している可能性があるとみて、国認可の監督機関「外国人技能実習機構」と合同で笠戸事業所を検査した。法務省は日立と実習生を紹介した団体に対して、同法に基づき改善を求める処分や指導を検討している模様だ。日立も技能実習不正か 目的外の職場に配置の疑い
複数の実習生が朝日新聞に実習状況を証言した。笠戸事業所は鉄道車両の製造拠点で、新幹線や、官民一体で受注した英国高速鉄道の車両製造などを手がけてきた。実習生によると、フィリピン人実習生が数百人働いているという。
実習生の証言によると、配電盤や制御盤を作る「電気機器組み立て」の習得のために昨春から日立で働いている複数の実習生が、英国向けの高速鉄道や日本の新幹線の車両に、窓や排水パイプ、カーペットやトイレを取り付ける作業しかしていないという。複数の実習生は法務省と実習機構による聴取にも同じ内容を訴えたという。
(朝日新聞デジタル 8月23日)

この問題は目的外の業務に就かせた企業側に非があるのだが、当該企業の遵法精神だけを糾弾しても根本的な解決には至らない。同じ事案が繰り返されるだろう。
実習機会の提供なのか、人手不足対策なのか。日立製作所の事案には、タテマエとホンネがかい離した外国人技能実習制度の矛盾が露呈した。人手不足対策を目的に実習生を受け入れれば“雇用感覚”が先立って、とくに疑問もなく目的外の業務に就かせてしまう。現場ではホンネが優先されるのだ。

一方、この制度に対しては、法務省と厚生労働省との共管に由来する問題も潜んでいる。「厚労省は実習生を増やしたいのでしょうが、法務省は入管の審査を厳しくして間口を絞っている印象があります。実習生を増やしたいという意図と、増やしたくないという意図が混在している制度ではないでしょうか」

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。