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中小企業の約2割が賃上げ見送り 東京商工リサーチ調査

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2014年春、中小企業の64.2%が賃上げを実施したことがわかった。大手企業は円安や景気回復に伴う好業績で99.2%(5月30日経済産業省調べ)が賃上げを実施したが、雇用のすそ野の広い中小企業でも賃上げの動きが広がっているようだ。ただ、約2割(19.3%)の企業が「先行きの見通し難」から賃上げを見送り、実施企業でも従業員の勤労意欲の維持や人材流出の防止、新たな人材確保に腐心している実態も浮き彫りになった。
(中略)
アンケート調査で、賃上げを検討した中小企業数は2,563社(構成比77.2%)だった。
賃上げを検討しなかった企業数は756社(同22.7%)にとどまり、有効回答を得られた企業全体の約8割が賃上げを検討していた。
(中略)
賃上げを見送った企業1,187社の理由は、「先行きの見通し難」が643社(構成比54.1%)
と半数を上回り最多だった。次いで、「その他」284社(同23.9%)、「原資が不足」260
社(同21.9%)の順。
景気の先行きが不透明で賃上げに踏み切れなかった企業が、賃上げを見送った企業全
体の5割以上を占め、まだ企業業績に力強さが欠けることがうかがえる。この他、「赤字」(三重・電気機器小売、山形・貸事務所、神奈川・化学機械装置製造ほか)、「売上上昇が見込めないと難しい」(神奈川・受託ソフトウエア開発)、「業績回復が条件」(広島・産業機械卸)など、業績低迷を理由とする企業も多い。また、「政策効果が出ていない」(北海道、建具工事)、「中小企業を取り巻く環境が改善していない」(長崎・冷凍水産食品加工)など、景気の回復遅れを理由とする回答もあった。(7月7日 東京商工リサーチ

賃金は人材獲得の価格競争力を発揮する。給与所得者が賃金の高い企業に目移りするのは当然のことで、目移りをもってして(世のため人のために尽くすという仕事の本義をわきまえていない)と単純な批判はできない。

賃上げを見送った食品製造業の社長は「アベノミクスの恩恵がわれわれのような中小企業まで廻ってこない」とこぼしたが、奮発して賃上げを実施した中小企業にも、同じような状況にとどまっている例は少なくない。

賃上げしなければ人材獲得の価格競争力に敗北し、事業の発展どころか、維持にさえ支障をきたしてしまう。よほどの求心力が必須だが、このような時期にこそ理念の力が問われてくる。

人は何のために働くのか。いろいろな考えがあろうが、長年にわたって好業績を維持する企業には(他人の幸せのために働く)という文化が染みついている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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