Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

外国人技能実習生、法令違反4200事業所 4年連続で最多

厚生労働省は20日、2017年に実施した外国人技能実習生が働く事業所に対する調査結果を公表した。調査した5966事業所のうち、約7割の4226事業所で違法残業や賃金未払いなどの法令違反を確認した。前年より5.5%増え、4年連続で過去最多を更新した。外国人実習生への不当な扱いが後を絶たず、厚労省は監督指導を強化する。
厚労省は外部情報などをもとに法令違反の疑いがある事業所に立ち入り調査などを実施。違反が見つかった場合は改善するよう指導している。
同省によると、17年の調査事業所数は前年比5.1%増えた。法令違反があった事業所のうち、最も多かったのは36協定を結ばずに残業させるなど「労働時間」に関する事項で1566事業所(26.2%)。使用する機械の安全対策が不十分など「安全基準」が1176事業所(19.7%)と続いた。
具体的には製本業の事業所で36協定の特別延長時間(月100時間)を超え、実習生に月160時間の残業をさせていた事例があった。造船工場内での作業中に転落して実習生が重傷を負ったにもかかわらず、労働災害を労基署に報告していないケースもあった。
(日本経済新聞 6月22日)

外国人技能実習制度に対して国連などから人権問題が指摘され、昨年11月に技能実習適正化法が施行された。監理団体と実習実施者への監督は強化されるが、あくまで制度上の規定にすぎない。制度が趣旨どおりに運用されなければ、実態は是正されない。
技能実習制度の趣旨は技能移転を目的とした実習だが、実習実施者のホンネは人手不足の解消である。このギャップが解消されない限り、法令違反は減少に向かわないだろう。
骨太の方針に、建設、農業、宿泊、造船、介護の5業種について外国人技能実習生の受け入れ拡大が盛り込まれ、ビジネスチャンスに着目して日本語学校の設立機運も高まっているが、受け入れが拡大するにつれて法令遵守がどこまで徹底されるのか。ますます法令違反が増えると見るのが妥当ではないだろうか

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。