2018/03/12
看護師不足が深刻化する中、病院などが人材紹介会社に支払う高額な手数料に頭を悩ませている。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)によると、2016年度の手数料総額は1医療機関あたり548万円。3年間で1億円以上を支払った病院もある。決められた看護師の数を割り込めば診療報酬を減額されるため、各医療機関は人材確保に躍起になっている。
「また辞めてしまったのか」。昨年11月、神奈川県内の総合病院で行われた理事会で、顧問税理士の男性(46)は深いため息をついた。配られた稟議(りんぎ)書には、4人の看護師を採用するため、紹介会社に約400万円の手数料を支払ったと記されていた。
約200床の急性期の総合病院。診療報酬の基準となる看護師配置を維持するには、代わりをすぐ雇う必要があるが「求人広告を出しても応募はない」。
男性が理事を務める同県内の別の病院(約400床)はさらに負担が重い。医師や看護師らを合わせた紹介手数料は年間約1億2千万円に上り、年間収入の1%を超える。「有資格者は限られており、病院の多い都市部ほど人手不足が深刻。紹介会社を頼るほか手立てがない」と嘆く。
(日本経済新聞 3月6日)
日医総研が病院と診療所を対象に実施した調査(対象施設4000、有効回答844)によると、直近3年間に紹介会社経由で職員(全職種・全雇用形態)を採用した施設は53.3%。1施設当たりの紹介手数料総額を2014年度に467万円、15年度に440万円、16年度には約100万円増えて548万円に膨らんだ。
1施設当たり紹介手数料支払総額(3年間合計)が1億円を超えた施設は5施設で、最大額は1億7000万円だった。看護職員(常勤)の紹介会社経由の採用者数は1施設平均5.5人。1人当たり紹介手数料は87万円だった。
紹介手数料が医業収益に占める割合は上昇傾向にあり、14年度に1.00%、15年度に1.49%、16年度には1.56%だった。医業収益の財源は診療報酬である。社会保障費が紹介手数料に費やされているのである。
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