Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

相談役 廃止相次ぐ

日本たばこ産業(JT)やカゴメ、伊藤忠商事など、相談役・顧問制度を廃止する企業が相次いでいる。同制度は会社法に規定がなく、慣習的に認められてきた日本企業特有の制度だ。外国人投資家を中心に、透明性などについて批判が出ている。企業統治(コーポレートガバナンス)の向上につなげる観点からも、見直しの動きが今後も広がりそうだ。
 
JTは6日、3月に相談役・顧問制度を廃止すると発表した。カゴメも同様の方針を1日に表明済み。両社とも3月下旬に開く株主総会での決議などを経て、正式に廃止する。JTは「必要性が認められなくなった」とし、カゴメは「成果を株主に明確に説明できないため」としている。伊藤忠商事も1月に相談役・顧問の役職を廃止することを発表している。
(日本経済新聞 2月7日)

相談役を設けている企業の多くが「大所高所から助言してもらう」と理由を説明するが、実態は論功行賞による名誉職である。名誉職という職制が問題なのではない。

たんなる冠なら弊害はないが、固定報酬と意思決定への介入が付きものだ。とくに意思決定への介入は院政を生み、役員人事にまで影響力を行使することが通例である。当初は相談役本人に権限への執着がなくとも、経営陣が忖度を重ねるうちに、権限への執着にはまってしまう。家族が引退を勧めても、聞き入れるとは限らない。ますます依怙地になる例もある。

会社にとっては老害になっても、社外から生涯現役志向がほめたたえられれば、引退の日は遠のく。大所高所からの助言がほしいのなら、助言が必要なときにコンサルティング料を支払えばよい。対価が成果に見合えば、株主への説明もつくだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。