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転勤ルール 社員に配慮

辞令1枚でどこへでも転勤するのは日本企業の正社員なら当たり前と考えられてきた。ただ、最近は育児や介護など様々な理由で転勤を望まない社員も増えている。多様な働き方に対応しようと、制度の運用を見直す企業も出始めている。
 
転勤のルールそのものについて労働基準法などに規定はない。各社の就業規則で勤務地を限定していなければ、社員の同意なしに転居を伴う配置転換が認められてきた。
 
判例も会社側の権利を認めている。仕事を持つ妻、幼い子供、高齢の母と暮らす男性社員が転勤を拒否して懲戒解雇になったのは無効だと争った訴訟では、1986年に最高裁が、「転勤で被る不利益を「通常甘受すべき程度」とし、懲戒解雇は有効と判断している。
(日本経済新聞 11月6日)

 
ある大手消費財メーカーの営業職は3年サイクルで転勤している。妻子をもつ社員の場合、子供の転校を避けるために皆単身赴任だという。

赴任先では賃貸マンションに住むが、会社が支払う家賃補助は、上限額を設けたうえで家賃の80%。大手メーカーだから給与水準はそれなりに高いそうだが、それでも二重生活は経済的にきついのではないか。
 
しかも3年ごとにコマのように動かされる人事はどうなのだろう。拒否はできないのか。

このメーカーの単身赴任者は「辞令に素直に従うのが当然という社風なので、転勤を拒否したケースは聞いたことがありません。家族と離れて暮らすのは寂しいですが、そういうものだと皆が思っています」と話す。

ワークライフバランスの発想がない人事だが、皆が従順に受け入れているのなら現状でよいのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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