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健康寿命を延ばすには――何歳でもチャレンジを

以前、ある企業でシニア社員向けの講義を依頼された。人事担当者は「50歳を過ぎた社員の多くは、やる気を失ってしまう。彼らの意欲がわくような話をしてください」という。その会社の人事制度を聞くと、53歳で役職定年、60歳で定年。65歳まで再雇用を選べるが、給与は仕事の成果にかかわらず3割程度になるという。僕は担当者に尋ねた。「君が50歳になったとき、この人事制度の下でやる気がでると思う?」と。答えはノーだった。
 
年齢だけを理由に役職を奪われたり、待遇を下げられたりすることは、働き手の意欲をそぐ。やる気のないシニアを横目に仕事に追われることになる若手や中堅社員にもマイナスだ。
(日本経済新聞 11月6日)

 
この記事はライフネット生命保険創業者の出口治朗氏の寄稿である。50代の社員がいまの役職に就いたままでは、40代が昇格できずに意欲を失ってしまうから役職定年を設け、給与を引き下げ、担当業務もヒラ社員と同等に引き下げる。

生来のサボリ魔なら役職と給与が下がっても、仕事が楽になって60歳まで過ごせれば本望だ。かつての部下が上司になったところで、役割が変わったにすぎず、心がざわめくようなことはない。だが、そんなタイプはごく限られ、大方は生真面目だから、出口氏が指摘する人事制度の問題が生ずる。

60歳を過ぎて再雇用されると給与が7割もカットされるのは、退職を促しているサインである。「会社にいてもよいが、3割しか払わないよ」と表明しているのだ。しかし、そこまで冷酷に処遇されても、勤務しつづけるのは、他社への中途入社にはリスクがともなうからだ。60歳をすぎてからの職場選びは安全第一。それでよいだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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