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東芝 止まらぬ人材流出

経営再建中の東芝で人材の流出が止まらない。会計不祥事の発覚から2年が過ぎても経営危機の出口は見えず、売却対象の半導体メモリー子会社だけでなく、原子力部門や本社の管理部門も求心力が低下している。メモリーの売却交渉が最終局面でもたつき、この間にも将来の東芝を担う社員が辞めていく。歯止めがかからなければ再建は一段とおぼつかなくなる。
 
「今の会社に不安はありませんか。 あなたならもっと活躍できる場所がありますよ」――。メモリー生産拠点、四日市工場(三重県四日市市)に勤める40代の技術者に今春以降、2度にわたって見知らぬ番号の着信が入った。相手は人材紹介会社の社員。この技術者は誘いを断ったが「春先からこれまでに同僚の何人かが転職先を告げずに辞めていった」という。
 
四日市工場と設計開発拠点の大船事業所(横浜市)周辺では帰宅途中の技術者に声をかけるスカウトマンが目撃されたという。これまで転職した元同僚の紹介や学会での発表内容を見て対策を絞り、優秀な東芝技術者を引き抜くのだ。
(日本経済新聞 9月9日)

東芝は人材の草刈り場になった。東芝に勤務しつづけても混乱に巻き込まれるだけで、しかも将来、退職金を受け取れるかどうかなど未知数になった。転職先が見つかれば、サッサと見切りをつけて辞めていくのは、当然の選択だろう。

一方で、東芝に勤務しつづけて、再建に関わることは貴重なキャリアである。再建がかなえば、その経験は人材市場で高く売れるかもしれない。だが、東芝に入社した社員にとって、再建に関わることは職業人生の無駄遣いに等しいのではないか。

再建にかけるエネルギーがあれば、開発業務に投入して先進的なアウトプットをしたほうが明らかに果実を得られる。東芝のために自分の人生があるのではなく、自分の人生のために東芝がある。この当たり前の理に、多くの東芝社員がしたがっている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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