厚生労働省は27日、「高度な専門職」で年収が数千万円以上の人を労働時間規制の対象外とし、仕事の「成果」だけに応じて賃金を払う新制度を導入する方針を固めた。2007年、第1次安倍政権が導入を目指しながら「残業代ゼロ」法案と批判され、断念した制度と類似の仕組みだ。同省は労働時間に関係なく成果のみで賃金が決まる対象を管理職のほかに広げることには慎重だったが、政府の産業競争力会議が導入を求めているのを受け、方針を転じた。田村憲久厚労相が28日の同会議で表明する。
厚労省は早ければ来年の通常国会に労働基準法改正案を提出し、16年4月にも導入する。同省が新制度の対象に想定する職種は、為替ディーラー▽資産運用担当者▽経済アナリストなど。いずれも世界レベルで通用するような人材に限定し、容認する方針。産業競争力会議が適用対象とするよう求めている企業の中核部門で働く人などは、自身である程度労働時間を配分できる「裁量労働制」の拡大で対応する構えだ。
(中略)
条件として労使の合意や本人の同意を挙げている。しかし、厚労省は高収入でなくとも適用でき、候補者の範囲がなしくずし的に広がりかねないとして、対案を示した。
労働基準法は企業に対し、1日8時間を超す労働には管理職を除き、残業代を支払うよう義務づけている。労働時間に関係なく成果に応じて賃金を払う制度の導入には、連合などが「企業は『成果が出ていない』と言って、残業代なしに社員を長時間働かせることが可能になる」と反発している(毎日新聞 5月27日)
この法案の本質はコストダウンの推進である。表向きは効率の良い働き方の推進だが、
法制化されれば、今以上に、年収1000万円以上の専門職を目一杯働かせようと意図する企業は激増するだろう。成果を出せない社員は、こちらもまた今以上に労働時間の投入が強いられてゆく。
この法案は労働強化と言えばそれまでだが、たぶん年収1000万円以上の専門職は、実質的には企業家に変身してゆくのではないか。20年以上も前になるが、公認会計士の安部忠氏が「サラリーマン法人化」を提唱した。
年収1000万円クラスの社員は法人化して、勤務先と業務委託契約を結ぶ。夫人を役員に就ければ人件費を経費計上できるし、取引先を他社にも拡大すれば売り上げを拡大できる。勤務先は社会保険料などの“第二人件費”を削減できる――おおよそ、こんな趣旨である。
問題は発注側である勤務先の優越的地位による契約停止リスクだが、契約期間を3~5年程度に結んでおけば、リスクヘッジを講ずるには必要にして十分である。社員としがらみの少ない新興企業で試みられるかもしれない。
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