高度成長以降、日本のインフラ建設を支えてきた建設業の「技能集団」が、次世代への技術・ノウハウの継承の危機に直面している。過去20年、公共工事などの建設投資の減少などで若手が減り、高齢化が進んでいるためだ。このままだと国内のインフラ整備に支障をきたす恐れがある。
総務省の統計では、建設業の全就業者に占める55歳以上の割合は、平成13~25年の間に23・9%から34・3%に上昇。一方で29歳以下は19・6%から10・2%へと低下した。全産業に比べると、建設業の高齢化が際立っていることが分かる。
これに伴い、人手不足も影を落とし始めた。大阪労働局によると、今年3月の大阪府の技能労働者(型枠工、鉄筋工、とび工)の有効求人倍率(原数値)は9・57倍。9人の職人が必要なのに、1人しか求職者がいない計算だ。東日本大震災の復興・復旧工事や東京五輪に向けた投資に沸く東北、首都圏も同様に高止まりしている。(産経新聞 5月18日)
団塊世代の大量退職でノウハウの伝承が断絶されかねない。10年ぐらい前から、この問題は製造現場から警察官の取調べ技術まで、至るところで懸念され続けてきた。
ノウハウの伝承なら定年延長や定年退職者の再雇用などでまかなえるため、65歳までの雇用の義務化は好ましい。ただ、建設業界の場合、ノウハウの伝承に人手不足が加わって悩みを大きくしている。
人手不足に対しては外国人労働者の雇用が解決策のひとつだが、これは東京オリンピックまでの建設需要への対処法にすぎない。オリンピックを終えて景気が反転すれば、今度は人員過剰となって、雇用の調整弁となった外国人労働者へのリストラの横行は必至だ。
外国人労働者の起用は雇用の柔軟性と言えなくもないが、やはり日本の若者が参じたくなる業界へと衣替えすることである。その意味で、女性を建設現場に起用する傾向は頼もしい。
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