2017/04/10
IT会社がうつ病で退職した元社員の男性(28)を相手取り約1270万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(石橋俊一裁判長)は30日、「不当訴訟によって男性が精神的苦痛を受けた」として、逆に会社に110万円の支払いを命じた。
判決などによると、男性は2014年4月、神奈川県内のIT会社に入社したが、長時間労働や上司のパワハラが原因でうつ病となり、同12月に退職した。会社が15年5月に「詐病で退社して会社に損害を与えた」と提訴してきたため、男性も反訴した。
判決は「会社側が主張する損害は生じ得ない」と指摘。訴状が届いた直後から不眠を訴えるようになるなど男性が精神的苦痛を受けたと認定した。男性の弁護士は「退職後の報復的な損害賠償請求は労働者を萎縮させ、『辞められない』被害を生む」と話した。
(毎日新聞 3月30日)
社員が心身を病んで休職や退職に至った場合、労務管理に問題があった事実を率直に認めず、組織防衛を図ろうとすると墓穴を掘ってしまう。社員が泣き寝入りする時代は終わったのである。
このIT会社は、社員を消耗品とみなしていたのではないか。消耗品が使用者を提訴するなど論外で、損害賠償請求で報復におよぶことは、条件反射のごとき行動だったのだろう。
組織防衛は内外に無用な対立を生み、その報いは自社に跳ね返ってくる。これはリスクマネジメントを問う以前の、社会の法則である。
不都合な真実の封印は、組織防衛どころか、かえって組織を弱体化させる。だが、いざ問題に直面すると、自己正当化に終始したがるのが組織の本能だ。
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