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春闘で異変、中小の賃上げが23年ぶり「平均」に並ぶ

今春闘で異変が起きている。自動車、電機など大手製造業のベースアップ(ベア)が前年を下回る水準での妥結が相次ぐ一方、中小製造業、食品・流通業の健闘が目立つ。17日午前時点での連合の第1回集計では、平均賃上げ率(定期昇給を含む)で、組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率(同)も2・06%で並んだ。 

連合加盟組合の平均賃上げと中小の賃上げ率が同率になったのは1994年の3・11%以来、23年ぶり。人手不足が背景にある。ただ、額は平均が6270円で、中小は5139円と開きがある。この20数年のベア積み上げが格差を生んだ。

デフレ脱却をめざす安倍晋三政権にとって従業員数の7割弱を占める中小労働者と非正規の待遇改善は大きな課題だ。中小企業庁は産業界に中小企業との取引条件改善を要求。結果、「値引き要求が減り、現金決済も浸透している」(連合・須田孝総合労働局長)。
(ニュースイッチ 3月20日)

大手企業と中小企業の賃金格差を見つづけていると“人生の損得”に思いが至る。経済格差と健康格差の関連はさまざまに分析されているが、大手企業と中小企業の社員の間にも、健康格差があるのだろうか。あるとすれば、これは損得の問題だ。

しかも、この損得は学業を終えた時点で、ほぼ決定づけられてしまう。転職の流れは大手から中小へと形づくられていて、中小から大手への転職はきわめて少なく、ほぼ例外といってよい。だからベンチャー企業が活況を呈しているなかでも、損得だけを考えれば、大手企業への新卒入社がベターだろう。

この記事は中小企業の賃上げ率に奮闘が見られることを報じているが、大手のように好調な賃上げ率を毎年継続することは難儀だ。学歴格差、経済格差、健康格差――格差のスパイラルは重層的である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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