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労基署業務 委託に難色――厚労省

政府の規制改革推進会議は16日、企業に立ち入り検査する労働基準監督署の業務の一部を民間に委託する検討会の初会合を開いた。民間委員は「監督官の不足で監督業務が不十分」と主張したが、所管の厚生労働省は「事業所の違法行為を見つけるのは複雑な仕事だ」などと難色を示した。同会議は6月の答申に委託解禁を盛る方針だが、調整が難航する可能性もある。

会議では、民間委員が「監督が放置されている事業所に民間人が行くなど官民は補完関係にある」と指摘。「民間人が書類閲覧を拒否された事業所に国の監督官が集中的に行けば効率も良くなる」と強調した。これに厚労省は「監督官が来るまでに証拠書類を処分されたらどうするのか」などと慎重な姿勢を示した。
(日本経済新聞 3月17日)

労働基準監督署業務の民間委託に厚生労働省が難色を示している真意は「事業所の違法行為を見つけるのは複雑な仕事だ」ではなく、他に何かあるのではないか。たしかに複雑な仕事だが、複雑だからこそ、民間企業で修羅場を経た労務管理経験者の知見がおおいに役立つはずである。

たとえば記録された就労時間と実際の差異をどう解明するのか、差異はどんな手段でつくり出されるのか、その指示系統はどうなっているのか。虚偽記録作成に逆らえばどうなるのか。違法行為を解明するには、違法を指示し、あるいは指示された経験者の手を借りるのが現実的だ。

人手不足の労基署に対して、厚労省が民間委託を逡巡していては、働き方改革が足元から風化してしまう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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