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働き方改革 会社と社員、足並みそろわず?

 政府と企業経営者が今年の重点課題と位置づける「働き方改革」。上場企業の担当者と正社員に改革の受け止めを聞くと、取り組むべき課題や改革のイメージを巡って意見の違いがあることがわかる。社会保障制度改革や長時間労働の是正を最優先に取り組むとする企業に対し、社員は賃上げを求める。労使の足並みがそろわないと、改革の果実も乏しくなる。

(中略)

 企業が最も期待しているのは「社会保障など女性や若者が活躍しやすい環境整備」。僅差で「長時間労働の是正」が続く。企業が国に求めるのは、女性や若者の就労意欲を高めるための支援ということになる。外国人の受け入れ増や同一賃金の要望は極めて少ない。政府と企業の対話はやや足りないようだ。

 正社員は「賃上げ」が4割を超えた。2割程度で2位となった「長時間労働の是正」を引き離し、目先の実入りを重視する姿勢がくっきり浮かぶ。改革が本来めざすべきは、働きやすさを高めて、成果を出す態勢を整えること。真っ先にお金を求める姿からは、改革への期待度の低さしかみえてこない。
(日本経済新聞電子版 1月10日)

長時間労働の是正を最優先にしているとは言うものの、多くの企業は、従業員が生み出す付加価値を減少させようとは思っていない。つまり、生産性を向上させ、創造する付加価値を維持しながら労働時間を短縮するのが、企業にとっての「働き方改革」の目標だ。

一方、従業員にとっては、残業が減るのに、求められる成果が同じでは厳しい。企業によっては、残業ゼロでも一定の残業手当を出すところもあるが、一般には、収入は減少する。正社員が収入減少のリスクのある「長時間労働の是正」よりも「賃上げ」を重視するのは当然だ。

両者の乖離を縮小させ、「働き方改革」のベクトルを合わせるには、給与の決定に労働時間だけでなく、成果評価も加味することが重要になる。同じ成果には同じ給与が支払われるなら、従業員としても早く仕事を終わらせた方が良い。同等の成果をいかに効率よく短時間で生み出すか、それを労使が協力して努力するような人事制度が求められている。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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