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メトロ日正規労働者が損害賠償を求め、運営会社を提訴

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東京メトロの駅売店で働く非正規労働者ら4人が1日、売店を運営する東京メトロの子会社「メトロコマース」(東京都台東区)を相手取り、正社員との3年分の賃金格差を含む計約4250万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。有期契約を理由に正社員との間に不合理な労働条件の格差を設けることを禁じた改正労働契約法(2013年4月施行)を根拠とした初めての裁判になる。
提訴したのは、全国一般東京東部労組メトロコマース支部の後呂(うしろ)良子委員長(60)ら2人と、定年になった組合員2人。訴状などによると、4人は3カ月から1年の契約を更新しながら物品販売などの仕事をしてきた。正社員と非正規労働者の仕事の内容は同じなのに、賃金には月給制と時給制という違いがあり、ボーナスも正社員の年間約150万円に対して非正規は2種類の雇用形態に応じて59万円または26万円に抑えられた。さらに、正社員にはある退職金も支給されないという。(毎日新聞 5月1日)

政府の要請に応じるかたちで正社員の賃金がアップされる時勢で、これに定年延長分の人件費負担がのしかかり、多くの企業が高コスト体質への転換を強いられた。非正規社員を消耗品のように扱っていない企業にとっても、非正規社員の賃上げまで手が廻らないのがおおかたの実情だ。

しかし人手不足が続けば、非正規社員の賃上げにも着手せざるをえなくなる。すでに人手不足から業務を受託できずに経営破綻に至る例が報道されているが、消費税が10%に引き上げられれば個人消費が一気に冷え込み、その余波を受けて人件費倒産が増えるだろう。

それにしても、正社員と非正規社員の格差はどんどん開いてく。小泉・竹中体制で推し進められた自己責任ブームで所得格差が顕著になったが、親の所得格差が子供の学歴格差となり、いまや富と貧困の連鎖が構造化しつつある。
富を再分配する社会制度を是とするか非とするかは、突き詰めればイデオロギー論争に行き着くが、争点が何であれ、教育と医療ぐらいは平等に提供されるべきだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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