ファストリ(注・ファーストリテイリング)の新卒社員の3年以内の離職率は約30%。ピーク時に50%程度に達していた水準と比べると低下しているが、業界水準と比べるとなお高いという。
ところが、11日の会見での物言いは一変した。「グローバル化だけではない。日常生活で成長する人生を認める」「成熟社会になると、精神的な安定を求める人が出てくる」などと話し、国内志向を積極的に評価する姿勢に変わった。「国内事業のすべてを180度変える」。これまでの経営の考え方を修正する反省会となった。
理由は圧倒的な人手不足だ。「少子高齢化により人材が枯渇する。時給千円で人が集まる時代は終わりを告げた」と大量で安価な労働力を前提としたチェーン経営の限界を示唆した。(日本経済新聞 4月12日)
「人材不足 ユニクロ変心」「部下は部品でない」という見出しが付けられたこの記事だけでは「従業員=部品」から「従業員=人格」へと、どこまで変わったのかがわからない。
少しは変わったのだろうが、問題は動機が人手不足であることだ。人手が足りていようと足りていまいと、従業員を部品のごとく扱ってはならないことなど小学生でもわかる道理である。
ファーストリテイリングに限ったことではないが、ブラック呼ばわりされていて、心から改善する意志を持っている企業は、離職率の低減目標値を公表すればよい。離職率には労務環境の改善度合いが鮮明に反映される。
実際、離職率の高い介護業界で、離職率の低減目標値を公表した事業者がある。社会法人伸こう福祉会(横浜市)で、昨年に、正規職員の年間離職率10%を9%に低減することをホームページに公表した。介護業界の平均離職率は約17%だから、伸こう福祉会の離職率は業界内では低いのだが、業界標準ではなく、いわば社会標準をめざしている。職場環境の改善に本気なのである。
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