2016/09/07
安倍晋三政権が国内総生産(GDP)600兆円の達成に向けて女性や高齢者の就労を推進する「1億総活躍社会」を目指す中、働き盛りの男性就労者の減少が続いている。
日本の失業率は3%台前半と低い水準で推移しているが、男性の長期失業者はバブルが崩壊した1990年代初めに比べて約5倍と急増している。総務省の労働力調査(2016年6月)によると25~44歳の就業者数は1466万人と48年ぶりの低い水準を記録した。女性就業者の増加が目立つ一方で、1億総活躍を進める安倍首相にとって働き盛りの男性就労者の減少は深刻な問題だ。
社会進出が進む女性の道のりもなお険しい。就業者数は増加傾向にあるものの、フルタイムの正規雇用に比べて比較的賃金が安く福利厚生も整っていないパートタイムの従事者が多い。同調査では男性の正規職員・従業員の割合が77.8%と高いのに比べ、女性は44.4%にとどまっている。日本銀行は3月に発表したリポートで、失業期間が1年以上の長期失業者は「25~44歳の男性に大きく偏っている」と指摘。2014年時点で31万人と90年代初めの6万人に比べて5倍となった背景について、製造業からサービス業にシフトする中での「需給のミスマッチ」を挙げている。
(Bloomberg 8月29日)
総務省の発表によると、今年7月の完全失業率は3・0%で、1995年5月以来21年2カ月ぶりの低い数字となった。厚生労働省の発表では7月の有効求人倍率は1・37倍で、6月に続いて91年8月に記録した1・40倍に匹敵する高い水準を保っている。
男性の働き盛り世代に長期失業者が増えているのは、ミスマッチといえばそれまでだが、結局はこの世代の男性に求人ニーズが少ないのだろう。もちろん建設業界や介護業界は求人ニーズが慢性的に高いが、働き盛り世代の男性が適応できる職場とは限らない。求職者が避ける業界であり、求人側もミスマッチが見えていて、採用対象から外したいのではないか。
とくに40代後半を過ぎると、どの求人も狭き門になってくる。歩合給のセールスマンですら、この年代になると採用候補から外される傾向が強い。それまで職場で裁量権をもっていた同世代の知人が窓際に追いやられ、人脈として活用できなくなるからだ。
しかし、長期失業者は早く就労したほうがよい。失業期間が長いと全身から生気が消え失せ、第一印象で“終わった人”と判断されかねない。
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