2016/08/29
急速に高齢化が進む欧州一の経済大国ドイツで、ドイツ連邦銀行(Bundesbank、中央銀行)が退職年齢を69歳に引き上げるよう提言したことから、国内で激しい論争が再燃している。経済アナリストらは定年引き上げを支持する一方、来年の総選挙に向けて年金を争点の一つにしたい政治家らは反対の姿勢を示している。
ジグマル・ガブリエル(Sigmar Gabriel)副首相兼経済相は即時に連銀の提案を批判。「工場労働者、店員、看護士、介護労働者、皆がこのアイデアは馬鹿げていると思うだろう。私も同じだ」と述べた。
論争の的となっている見解は連銀が今月公表した報告書の一文で「現在の財政状態は公的年金の財源確保に十分な状況にあるが、その持続性を確保するためには改変が必要な点もあるという事実から目をそらせるべきではない」と指摘したもの。法定退職年齢については、すでに現行の65歳から2029年までに67歳に引き上げることが決まっているが、連銀は年金制度の安定を確保する手段として、さらに2060年をめどに退職年齢を段階的に69歳まで引き上げるべきだと提案した。
(AFP=時事 8月21日)
日本で退職年齢が70歳まで引き上げられるのは時間の問題だ。年金財源の確保策だけでなく人手不足対策として、60代で引退されてしまったら困るのが国情である。人手不足がもっとも顕著な業界である介護業界では、80歳まで雇用を継続するケースが散見されるようになった。後追いする業界も出てくるだろう。
退職年齢の引き上げは社員も望んでいるのではないか。第二の人生とか余生という時間は退屈に覆われ、張り合いを失えば健康も害してしまうと怖れを抱くのが、大方の日本人である。政府も国民性を逆手に取っているのかどうかはともかく、健康寿命の延伸をキーワードに、生涯現役を促している。
すでにメガバンクが実質的な定年を50歳に設定して、以降は再雇用扱いにしているように、やがて多くの企業が人件費をコントロールするために定年を2段階に設けるようになるだろう。新卒で入社しても第一線で活躍できるのは、せいぜい40代半までとなれば、50代以降をどうするかは自分で決めなければならない。勤務先に頼っても、若い世代のアシスタントの椅子が用意されるだけである。
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