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住んで働くなら、自治体が奨学金を肩代わり

地域での就労を条件に奨学金の返済を肩代わりする自治体が相次いでいる。奨学金制度を運営する日本学生支援機構によると10県程度で導入している。地方では東京などへの若者の流出に歯止めがかからず、労働力不足が深刻化している。奨学金返済の負担を軽減することで地域への転入を促し、労働力の確保につなげる。
(中略)
同機構によると、2014年度に奨学金を利用している大学生・短大生は103万8000人で、全学生に占める割合は38・7%。授業料や入学料が高止まりしており、奨学金の利用者が増えているとされる。返済に苦しむ人も多く、3カ月以上延滞している人は約17万人にのぼる。
(日本経済新聞 8月10日)

この記事によると、福井県は県内の農林漁業や情報サービス行への就労、山口県は県内に本社や支店のある製造業への就労、大分県は県内の中小製造業で研究開発や製造技術を担う職場への就労を条件に奨学金を肩代わりするという。

大学生・短大生の保護者の多くはサラリーマンで、年齢は40代半ばから後半に集中しているだろう。この年齢層は住宅ローンをかかえているうえに、勤務先では昇進を終え、出向や転籍を経て給与が下がり始める時期にさしかかる。年間100万円におよぶ学費や毎月の仕送りを捻出するのは難儀だ。

その結果、4割近くの学生が奨学金を利用する事態に至ったのだが、どれだけの学生が肩代わりを条件に地方に就職するのだろうか。借金を肩代わりしてもらうのなら、希望しない就労環境でも甘受するのは当然だが、職場と返済のどちらを優先するかは難しい判断である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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