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介護人材の賃金を月1万円引き上げ ― 一億総活躍プラン

一億総活躍プランの3本目の矢が「介護離職ゼロ」だ。少子高齢化で両親らの介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人にものぼる。希望しても特別養護老人ホームに入れないなど、老親と暮らしながら自らの手で面倒をみる人は少なくない。政府は介護職員の賃上げを進め、介護施設の新設も急ぐ。
一億プランでは介護の受け皿を充実させるため、まず介護人材の処遇改善に取り組むとした。施設の担い手は劣悪な条件下で働いているケースが多く、離職率も高くなりがち。介護福祉士の資格を持ちながら他産業に流出するケースも多い。
そこで介護保険の財源を生かし、2017年度から介護人材の賃金を月額で平均1万円程度引き上げる。

(日本経済新聞 5月19日)

介護人材の賃金を引き上げるには介護報酬の引き上げが必須というのが、介護業界の主張である。前回の介護報酬改定をめぐって問題視された社会福祉法人の内部留保についても、業界団体は「現預金は少ない」と反論した。
この主張に対して、真っ向から反証したのがキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の松山幸弘氏だ。松山氏は今年3月28日付け日本経済新聞に、社会福祉法人全体の内部留保が計2兆円に達すること発表した。
松山氏と同研究所主任研究員の柏木恵氏の寄稿によると、内部留保が問題視されている社福は厚労省所轄と自治体所轄を合わせて約1万8000法人のうち、同研究所が全国社会福祉法人経営者協議会のサイトで特定した5531法人の財務諸表を集計し、さらに残りに1万2500法人の資産規模から類推して、純金融資産は全体で2兆円に達することを推計した。
法人間の経営格差があるとはいえ、賃上げの財源は内部留保に潜んでいるようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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