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春闘、ベア引き上げ幅の前年割れが続出

2016年春闘は16日、主要企業の集中回答日を迎えた。主要企業は3年連続で賃金を底上げするベースアップ(ベア)に踏み切るものの、引き上げ幅は前年割れが続出。政権が企業に賃上げを促す「官製春闘」は3巡目だが、円高や世界経済の減速が企業の体力をそいでおり、賃上げをテコに消費拡大を目指すアベノミクスには逆風となりそうだ。

「経営環境を考えると、1000円も出せない」「我々は製品の質向上に貢献してきた」。3月9日に行われたトヨタ自動車の3回目の労使交渉は、ベアの水準を巡り激論が交わされた。

経営側が最初に打診した水準は、要求額の3分の1、前年実績の4分の1にとどまる。経営環境の悪化を踏まえて要求額を前年の半分に引き下げていた労組だが、これには「賃上げで経済の好循環を作るのも企業の社会的役割だ」と反発した。交渉は回答日前日までもつれた結果、経営側は「従業員の意欲に応える」として絞り出すように500円を積み増し、前年の半分の水準で妥結。豊田章男社長は「経営の潮目が変わった」と理解を求めた。
(毎日新聞 3月16日)

この2年、大手企業の賃上げに合わせざるを得なかった中小企業には、人件費倒産も発生した。ベア引き上げの前年割れの続出は、中小企業にとっては一服感を得られたかもしれない。
賃上げによる景気回復を仕掛けられなければ、消費税増税が延期される公算も濃厚になるだろう。一方で、消費増増税で社会保障財源を確保できなければ、保育も介護もサービス基盤の整備が進まない。介護離職ゼロ政策も実効性を発揮できない。

骨太の方針では「経済再生なくして財政再建なし」と謳われた。社会保障よりも景気回復が優先されるのは、現下の景況では不可避の選択肢である。経営者を取材すると、多くの経営者が経済政策の優先事項に規制緩和を挙げる。
規制緩和の壁には既得権だけでなく、行政権の縮小もあるだろうが、一時的に抵抗が実ったところで、時流は緩和へと向かっている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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