2016/03/07
企業の利益のうち、労働者の取り分を示す「労働分配率」は低い水準が続いている。ニッセイ基礎研究所の試算では、2015年10~12月期の分配率は61.1%。7~9月期から0.5ポイント上がったが、08~09年の70%超には遠く及ばない。
政府が描く景気回復のシナリオは好調な企業収益を賃上げにつなげ、消費を喚起するというものだ。今春の労使交渉で労働者の給与がどれだけ増えるかが景気回復の焦点になる。
企業の内部留保は15年10~12月期に前年同期比で7.2%増えた。ただ最近の市場動揺から労働組合側の要求は1年前に比べて抑え気味で、大幅な賃上げは見込みづらくなっている。
(日本経済新聞 3月2日)
賃金の変化は、企業収益の変化よりも遅れる傾向があり、かつ、下方硬直性がある。したがって、景気後退期では企業収益が減少しているにも関わらず、賃金はそれほど下がらないため、労働分配率が高くなることもある。逆に、景気回復期では、企業収益の伸びほどには賃金が上がらず、労働分配率は低下する局面もある。
そう考えれば、足元の10~12月期で企業の内部留保が増加しているにも関わらず労働分配率が低いということは、今後の賃上げ余地が大きいともいえる。
しかし、年初からの急激な株安、円高は、実体経済にも影響を与えており、今年の春闘は労使ともに大幅な賃上げに慎重だ。上場企業の内部留保の一部は、賃上げよりも割安になった自社株の購入に向かっている。
株価低迷時の自社株買いは合理的な経営判断ではあるが、本来、内部留保は成長のための投資に向けられることが望ましい。成長によって、株主にも労働者にも分配する額を増やし、経済全体の需要を拡大することは企業の使命。世界的に需要減が危惧されている今こそ企業家の創造性が試されている。
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