2015/05/29
目次
1.はじめに
2.公認会計士のキャリアパスには何があるか
2-1.監査法人
2-2.会計、財務系コンサルティングファーム
2-3.金融機関
2-4.その他一般事業会社
3.組織内会計士について
3-1.組織内会計士とは
3-2.組織内会計士の意義
3-3.組織内会計士の活躍事例
4.今回のレポートで感じたこと。
お久しぶりです。インターンの西山です。ジーニアスでインターンを始め、早一年になります。一期生が卒業したことで、インターンでは一番の古株となりましたので、一層気を引き締めて仕事に取り組んでいきます。さて、この度二回目のレポートとして、「公認会計士のキャリアパス」について考察していきます。
私は、平成28年公認会計士試験合格に向け日々勉学に励んでいます。自分が進もうとしている道ですから、会計士にはどのようなキャリアがあるのかを知っておく必要があると考えました。ジーニアスでのインターンを通して、会計士が進む道として、監査法人や独立開業だけでなく、コンサルティングファーム、金融機関、一般事業会社に勤める企業内会計士が増えていることを知りました。会計士のキャリアパスが複線化する中、様々なキャリアパスを知り、納得して自分が進みたい道を決めるべく、このテーマを掘り下げていきます。
公認会計士として業務を営むには、
(1) 公認会計士試験に合格した者(免除された者を含む)であること
(2) 実務経験(業務補助等)の期間が2年以上ある者であること
(3) 実務補習を修了し、内閣総理大臣の確認を受けた者であること
の三要件が必須となります(公認会計士法第3条、第17条、第18条)。
試験合格者の多くが監査法人に進みますが、税理士法人や事業会社でも、資本金額が5億円以上の法人を対象に原価計算や財務分析に関する事務を行えば、実務経験として認められ、公認会計士登録をすることができます(金融庁HPより抜粋)。
また、会計士が行うことのできる業務には、独占業務である監査業務以外にも、税務業務、財務アドバイザリー業務、会計コンサルティング等の幅広い会計関連の業務があります。したがって、そのキャリアパスにも様々な道があるのです。以下では、会計士の代表的なキャリアについて分析します。
先述のように、公認会計士試験合格者の多くが進む道です。監査という仕事を通して多様な業種の経営者と仕事ができ、会社や業界の内情を知ることができます。監査の実務経験を積み、認定試験に合格すると公認会計士登録ができますが、監査法人に就職した場合、その会計士登録を済ませたのちに後述するような会社に転職する方、独立開業する方、そのまま監査法人に残る方に分かれます。監査法人に残る場合は、パートナーを目指し仕事に励むことになります。
パートナーは監査法人の出資者かつ共同経営者であり、事業会社における役員クラスとなります。3大監査法人の一角である有限責任監査法人トーマツでは、パートナーは公認会計士全体(会計士補、試験合格者は除く)の約21.67%であり、事業会社より格段に出世競争は少なく、その年収も平均2,000万程と言われています。以上のように、監査法人に入ることで監査という独占業務を行うことができ、安定した高収入も得られます。しかし、監査は自分で何かを生み出すものではなく、チェックする立場の仕事であるため、プレーヤーとしての仕事を求め、転職して事業会社にキャリアチェンジされる方も多いようです。
会計、財務系コンサルファームは、M&AやIPOの支援、事業再生のコンサルティング等を行います。代表的なものとして、PwC、デロイトトーマツ、EY、KPMGの4大監査法人のグループコンサルファームがあり、監査の実務を経験した後に監査法人から転職する方もいます。
急速に進むグローバル化、そして近年の景気回復により会計の専門知識を有するコンサルタントのニーズは高まっており、会計士はその会計の知識や実務能力で有利に立つことができます。
コンサルティング業務ですから、多様な会社の内部を見ることもできます。もちろん、知識だけでなく、コミュニケーション能力、戦略立案力、交渉力等も必要と思われます。若手の内から大きな仕事を任され、高い年収を稼ぐことも可能であり、人気の高い業界ですが、アップオアアウトという言葉があるように、とても競争が厳しい業界のようです。
転職サイトで様々な方のレジュメを拝見しますが、コンサルタントとして長く1つの会社で働く方は少なく、別のファームや事業会社などにキャリアチェンジする方の方が多いように感じました。もっとも求職者の登録サイトですので、転職する人が多いのは当たり前であり、会計士資格を持つコンサルタント全体のトレンドではないかもしれませんが。
銀行、証券会社等の金融機関で会計士としての知識を活かす道です。財務デューデリジェンス業務やバリュエーション業務、さらに融資業務や資産運用でも会計士としての知識は活かすことができるようです。しかし、会計以外の高度な金融専門知識も必要で、コンサル業界同様競争は厳しい業界です。
専門職と総合職採用の2つがあり、総合職採用の場合は、自らの希望する部署に入れないこともあり、会計の専門キャリアが生かせない可能性も感じました。金融機関に就職するのであれば、専門職を目指すか、会計士であることは置いておいて純粋に金融マンとしてキャリアを作ることが大切だと思います。
一般事業会社の内部で経理、財務、経営企画として活躍する道です。事業会社で財務分析の経験を積み、会計士登録をすると、企業内会計士となります。ファーストキャリアとして事業会社に進む場合は、新卒として就活をし、就職後も新卒社員として扱われるため、収入は監査法人やコンサルと比べると控えめです。
さらに、コンサルではないために、関わることのできる業界は自社の属する業界のみとなります。しかし、監査をしたり、アドバイスをしたり、他人のために仕事をするのではなく、事業会社で何かしら事業の意思決定を行い、実務を推進していくキャリアに魅力を感じ、企業内会計士となる会計士も増えています。監査法人からの転職を考えた場合も、有力な選択肢となると感じました
日本公認会計士協会ウェブサイトによると、組織内会計士とは、日本公認会計士協会の会員及び準会員のうち会社その他の法人(監査法人、税理士法人及びネットワークファームに該当する法人を除く。)又は行政機関に雇用され、又はその業務に従事している者(役員に就任している者を含む。)をいいます。
組織内会計士のキャリアは、日本公認会計士協会の組織内会計士活躍者インタビューにて10名中8名が監査法人経由で組織内会計士となっているように、その多くは監査法人で監査の実務経験を積んでからの転職という形をとっています。日本公認会計士協会の会員である公認会計士は約2万7千人で、その中で組織内会計士は約千人となっています。一見少ないように感じますが、下グラフを見ると、2012年12月末から2014年12月末にかけて約二倍に増えていることが分かります。
金融庁は、公認会計士の幅広い活躍を期待していますが、いまだ会計士の幅広い登用は進んでいないとの見解を示しています(そのため、試験合格者を減らしている)。しかし、そのような中で組織内会計士が増えていることは、会計専門家を雇う事の必要性を認めた企業が増えてきたことの表れでしょう。では、事業会社が会計士を雇うメリットはどこにあるのでしょうか。
会計専門家としての業務が多岐に渡ることは先述した通りですが、事業会社では具体的にどのような活用方法があるのでしょうか。
ⅰ. 財務・経理部門
決算業務や予算編成、財務分析等の通常の経理業務を会計士が行うことで、より質の高い業務となります。証券会社や監査法人との折衝もスムーズになるでしょう。また近年、急速に進むグローバル化に伴い、会計基準を国際化する動きが活発になっています。そのため、国際財務報告基準(IFRS)の導入における会計士のニーズも高まっています。
ⅱ. 経営企画部門
高度な財務分析能力を活かし、IPO準備、M&Aや資金調達等の財務戦略の立案といった企業の経営に近い部門でも会計士は活躍できます。ベンチャー企業等では会計士がCFOとして重要な地位にいるケースもあります。
ⅲ. 監査等
監査業務経験や専門知識を活かし、監査役としてJ-SOXに対応した内部統制監査等の監査を行います。会計士を雇うことで、投資家へのアピールにもなります。
このように、事業会社で会計士が活躍する分野は幅広く、会計士を雇うメリットは大きいと言えます。金融庁が会計士の幅広い活躍を期待している点、大手監査法人が試験合格者の採用人数を増やしているのは転職者が多いことの裏返しである点、会計士の活躍できるフィールドが広がっている点などから、組織内会計士はさらに増加していくと思われます。
三上さんの紹介で、組織内会計士として今まさに活躍されている方にインタビューさせて頂きました。
西山:監査法人から事業会社に転職したのは何故ですか?
AK氏:監査という仕事は事業会社が作った資料をチェックする、という立場であり、言うならば受け身の仕事です。監査法人での勤務が長くなるにつれ、自らが事業を行う側で仕事がしたいと思うようになりました。そんな中たまたま興味を魅かれた案件に出会えた幸運もあります。しかし、監査法人ではスケールの大きな仕事にも関われるので、やりがいも大きいです。
私が考えているように、ゆくゆくはプレーヤーとして活躍したいという人は多いようです。
監査法人にいるメリットも大きいとは思いますが、これからさらに組織内会計士が増えるものと改めて感じました。
西山:監査法人でのどのような経験が現在役に立っていますか?
AK氏:まずは人脈です。新日本監査法人という大手に属していたことで、多くの会計士との人脈を持つことができます。事業会社にいるとその広いネットワークを感じることができます。また海外では、公認会計士としてEYグループの監査法人で働いていたという経歴が信頼へと繋がり、外国人弁護士やCPAとも当然に対等に話すことができます。
さらに、多様な企業の内部を見た経験から、人が気付かない点を知っているため違った切り口で指摘でき、キャッシュインフローにつながる成果を出しやすいのも大きいですね。
監査法人では、そこでしか得られない貴重な経験や人脈があるようです。これは、転職後も大きな武器となっており、また事業会社が会計士を採用する際のポイントになりそうです。
西山:監査法人からの転職することについてどうお考えですか?
AK氏:大手の監査法人にいる人の過半数は転職したいと思っているのではないでしょうか。しかし、転職して満足している人はその中で半分くらいかもしれません。事業会社では監査法人より競争が激しく、期待が大きい分責任も大きくなります。また、単純な経理職としての転職は厳しいことが多いです。経理だと会計士でなくてもできる業務が多く、業務スピードはプロパーの社員の方が圧倒的に速いからです。このように、事業会社への転職が全て成功というわけではありません。監査法人に残ってスケールの大きい仕事に関わるというやりがいもありますしね。転職するかしないかは関係なく、高い意識も持って仕事をし、胸を張れる武器を持つことが大事だと思います。
転職で満足できるかどうかは、やはり自分次第です。評価を高めた上でのポジティブな転職か、出世できないから仕方なくというネガティブな転職か、ここには大きな差がありそうです。
公認会計士のキャリアパス、特に組織内会計士について調べ、まとめたことで、自分がなぜ公認会計士を志しているのかを改めて考えさせられました。きっかけは単純に目標を持ち学生生活を過ごしたかったことですが、会計士の活躍できるフィールドを調べる中で、自分もビジネスの最前線で活躍してみたいという思いが強くなりました。3-3で紹介した組織内会計士の方々と同様、自らのアクションで事業会社の発展に貢献してみたいと感じました。
もちろん監査法人での勤務経験は組織内会計士を目指す人にとって役に立たない訳ではありません。多様な業種の企業の内部を見るという経験、リスクマネジメントの考え方、そして人脈も得ることができます。
私も、合格後は監査法人で経験を積んだ後に組織内会計士を目指すつもりです。そこで重要になるのは、監査法人での過ごし方です。今回の分析では、監査のみの経験しかない会計士は事業会社では使えないという話を耳にすることもありました。自分が将来にわたってどのようなキャリアを積んでいきたいのかを良く考え、漫然と仕事をこなすのではなく、監査という仕事の中で次のキャリアで生かせる仕事の取り組み方や考え方を主体的に学ぶことが重要だと感じました。
今から転職ありきの人生を考えることはあまり意味がないと三上さんからは指摘を受けましたが、まずは会計士になり、更には会計知識を活用して事業を自ら推進するような人生を歩むためには、漠然と勉強する、就職する、仕事するのではなく、目標を持ってスキルや経験を積んでいくことが重要だと感じました。
「主体的に学ぶこと」、これは学生以上に社会人にとって必須にもので、忙しさの中で忘れてしまいそうですが、その姿勢を持ち続けたいと考えます。これからも、大学での勉強や資格試験の勉強、そしてインターンを通して知識や考え方を身につけていきたいと思います。
今回のレポート作成を通じて、OB訪問などにご協力いただいた皆様に心より感謝いたします。
○参考文献
金融庁HP
http://www.fsa.go.jp/ordinary/kouninkaikeisi/
有限責任監査法人トーマツHP
http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/audit/audit.html
(分析者: 西山 碩紀 レポート第1弾 「監査法人業界分析-売上減少傾向と会計士比率」はこちら)
上記の記事の通り、近年、
上場企業では従来は経理部門や内部統制部門などが受け入れ先とし
でしたが、積極的なM&
企画、財務などでニーズが増えています。
一方で未上場のオーナー会社では、その資本政策にも依りますが、
事業会社と創業家の資産管理会社の双方の管理統括の必要性や事業
会計士のキャリアが複線化し、
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