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人材系企業決算比較、利益率トップ3社を比較しました。(前編:JAC分析)

1.はじめに

今回のテーマは人材業界についてである。
私は現在ジーニアスを含め二つの人材系企業でインターンシップを行っている。
もう一方の企業は、ジーニアスと同様のヘッドハンティングサービスや新卒採用の支援を行っている会社であり、私は新卒採用に関わる事業部に所属しインターンシップを行っている。

今回私が人材業界をレポートのテーマとして選んだ理由は、「二つの人材系企業でインターンをしているにもかかわらず、人材業界について実は良く分かっていない」と感じたからである。
最もジーニアスでヘッドハンティング、もう一方の企業で登録型の人材紹介や新卒採用支援に携わっており、両者の違いは理解している。しかし人材ビジネスには派遣や求人広告、人材紹介会社向けサービスなど更に様々なビジネスがあり、一度俯瞰して分析したいと考えた。
そこで、人材業界に関する俯瞰的な認識を持つことで、後のインターンでの業務はもちろん就職活動にも活かすことを目的としてレポートを作成した。
⇒その他、人材会社利業利益率TOP36一覧はこちら

先日人材業界の決算の比較表を作成したが、本レポートでは、利益率トップ3のJACリクルートメント、ディップ、エン・ジャパンがそれぞれ何を理由として高い利益率を叩き出しているのかについて考察していきたい。

2.JACリクルートメント

JACリクルートメント(以下、JAC)は1988年から日本で人材紹介サービスを行っている老舗企業である。人材紹介単体では、リクルートグループ(リクルートキャリア、その他の紹介類似ビジネス含む)、テンプスタッフグループ(中核はインテリジェンス)に次ぐ、国内第三位の売上実績を誇る外資系企業である。オーナーは日本人だが、イギリス本社のため外資系という取扱いになっている点が非常に興味深く感じた。

JACの特徴は、他の人材業界大手企業が派遣や求人広告など複数のビジネスポートフォリオを形成することにより収益化を図っているのに対して、人材紹介サービスのみに特化している点にある。
具体的なサービスの特徴としては、第一に求人の決定手数料が高いこと、第二に事業規模が大きいこと、そして第三に外資系と日系の海外関連求人に強いということが挙げられる。

2-1.そもそも人材紹介における売上とは何か?


まずは売上について分析した。
人材紹介業には、そもそも成功報酬型と前金型(リテイナー契約)の2種類の契約がある。成功報酬型は、採用決定時(入社時のことが多い)に売上が計上されるため、それまで依頼主である求人企業には特に費用が発生しない。
また成功報酬型の人材紹介会社は登録型求人サイトを運営していることが多く、基本的には登録された求職者を求人企業に推薦する。そして採用決定には特にコミットせず、適任者があれば推薦するが、そうでなければ斡旋を終了する。

一方で前金型は、契約時(人材サーチ開始時)に一定の手数料を支払い、採用決定時に成功報酬を再度支払うものである。契約形態によっては、着手時に全額支払う場合もある。多くはヘッドハンティング会社をはじめとした「サーチ型」の人材紹介によく見られる契約方法である。
前金型の場合は、採用決定までの期間を契約で縛り、着手金に基づいてターゲット人材を転職の有無に関わらずスカウトする。そのため、成功報酬型の場合に比べて契約期間内に採用決定できる可能性が高いこと、条件に合った候補者へのアプローチが可能になるが、採用費用は高くなる。

なお、JACでは成功報酬型を採用している。成功報酬の相場は業界によって異なるようだが、概ね25~35%程度であり、医療系(医師紹介)などは20%、IT系のエンジニア案件などは個別に50%~100%のようだ。

2-2.人材紹介における支出とは何か?


次に人材紹介業の支出であるが、人件費及び広告費用(求職者獲得のためのサイト運営やリスティング広告費用)が挙げられる。
前金型の会社は個人情報取得の調査費用の割合が高くなる。ジーニアスでは毎月200~300万円調査委費用を計上している。

JACの従業員数は2015年4月末時点で573名、うち475名はコンサルタント人員であり、これは従業員のうち83%がコンサルタントであることを意味する。また営業とコーディネーターを分業せず、1人のコンサルタントが担当する一気通貫制度を採用している。人材業界の直間比率は不明だが、規模を拡大すると営業(RA)とコーディネーター(CA)を分業する会社が多く、どうしても間接比率が高くなってしまうようだ。JACは事業規模を拡大してもプロフィットセンターの比率を高く保っていることが、高い利益率に影響しているものと感じた。

広告費用は各社インターネット広告を活用、Yahoo!とGoogleのリスティング広告に多額の投資を行っている。但し、ネット広告はその出向金額をタイムリーに増減することが可能であり、月次や四半期などで売上が苦しい場合は、投資を抑えることでバランスを取っているようだ。

2-3.28.7%の高い利益率はなぜ達成できているのか?

JACは2014年の売上高が92億7900万円、営業利益が26億6300万円、利益率28.7%となっており、利益率は人材業界の中でトップとなっている。その理由として、「求人」と「登録者」双方に於いて高い成約率を確保したこと、チーム・組織での目標達成の促進を図ったことが挙げられると考える。

JACは2014年度の経営方針として「個人はプロに」「チームで勝つ」「拡大につなげる」の3点を打ち出している。
特に「個人はプロに」の施策においては、求人成約率20%、人材(登録者)成約率10%という目標を掲げ、結果として求人成約率18.8%、人材成約率8.8%という高い成約率を達成している。

またリサーチャーを配置してコンサルタントへのサポート体制を充実させることにより、コンサルタントがコア業務に従事しやすい環境を整えている。
リサーチャーの業務は私がインターンで行っているマッチングという作業とだいたい同じだと思われる。ジーニアスでは前金型の求人成約率は90%以上、人材成約率はそもそも測っていないとコメントがあった。前金型の会社はクライアント企業にコミットしているので人材成約率に興味はないようだ。

JACの高い利益率は、プロフィットセンターの比率が高いこと、更には求人成約率、人材成約率を非常に高い水準で維持できたことが要因であると判断した。

以上の理由から、JACは28.7%と高い営業利益率を出すことができたと解する。

2-4.JACの今後の課題

日本における成功報酬型の人材紹介の手数料は、基本的には求職者の想定年収の30~35%が相場となっている。JACにおいても、一件あたりの成約手数料は2014年時点で平均195万円となっており決定手数料の高さがうかがえる。
しかし、世界を見渡すとその人材紹介手数料は15%~20%が相場となっており、日本の人材紹介における紹介手数料は他の地域に比して高いということが分かる。

JACの平均成約手数料は2012年~2014年の過去3年間で173万円→180万円→195万円、と順調に伸びているかのように見える。しかしながら、人材紹介市場もグローバル化が進むと、料率は低い方に落ち着いていく可能性がある。

また、同様に海外ではインハウスリクルーティングや採用代行(RPO)がビジネスを拡大しており、エージェントを活用するのではなく、エージェントを内包する企業が増えている。これは日本でも増加することが予想され、こちらもJACには余り好ましくない環境かもしれない。

但し、求人成約率、人材成約率の双方を高次元で維持し続けることは、「決めてくれる紹介会社」としてとてもよいブランディングに繋がると思われる。その結果、良質な(独占的な)リピートオーダーを獲得するようなサイクルが生まれると、数多ある成功報酬型人材紹介会社の中で大きな差別化が実現できるのではないかと感じた。

⇒次回、後編、ディップ株式会社を考察する。(Coming soon)

 


(分析者: 縄田 桃子 レポート第1弾 「ネットバンクの勝者とは-預金残高前年比+37%!全8行を比較して見えたネット銀行のチャンス」はこちら )

人材業界 転職市場トレンド

人材業界においては、景気回復の影響により各社とも受注(クライアントからの問い合わせ)が好調で、求職者の集客に頭を悩ませている会社が増加しています。
大手企業は広告投資枠を広げて、人材獲得合戦を繰り広げていますが、中小規模以下の企業は同様の戦略を取れません。そのため効率的な集客を行うためのマーケティングチームやWEB部門の組成や拡充が相次いでいます。
また、派遣会社では派遣法改正に伴い、契約書や業務フロー変更が急務となっています。同領域では業務フロー構築や業務改善といったスキルや経験を持たれた方を募集しているケースが多いと思われます。(ジーニアス 三上)


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縄田桃子

著者情報:
縄田桃子

早稲田大学法学部インターン2期生。弁論サークルにて「話す力」や「リサーチをする力」を身につける。次年度から始まる就職活動に対し漠然と不安を抱き、社会的な実務にも通用するスキルを身につけたいと思い、2014年9月からジーニアスに飛び込む。志望業界としては金融業界を中心に、幅広い業界みている。

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