2015/04/16
目次
はじめに
1.韓国の証券取引所
2.サムスンを決算書から分析
2-1.事業別セグメント
2-2.最新決算
3.サムスン vs 競合他社
3-1.サムスン vs アップル
3-2.サムスン vs 東芝
4.サムスン従業員状況
5.サムスンの課題
6.所感
こんにちは、ナヨンです。新学期を迎えて、いよいよ就職活動も本番を迎えました。4月以降は日本の大企業の新卒採用が本格化します。エントリーシートや面接などスケジュールがどんどん詰まってきており、少しだけ焦りや不安も感じます。
今回の企業分析は私の母国韓国を代表するサムスン電子を取り上げます。また、サムスンについて検討する前に、韓国の証券取引所についても少しだけ触れたいと思います。
韓国にも日本の東証、マザーズ、ジャスダック市場に該当するような取引所があります。日本の東証に当たる韓国取引所(Korea Exchange, KRX)は、2005年1月から既存の証券取引所や韓国先物取引所、KOSDAQ市場が統合され発足しました。
有価証券市場(KOSPI)
韓国を代表する大手企業が上場しています。
・日本の東証1部と類似した取扱いです。
・KOSPI200は代表的な優良株指数であり、先物やオプションなどのような金融商品の基礎指数として用いられます。KOSDAQ市場
成長型の中小企業が中心です。
・1996年にアメリカNASDAQ市場にならって設立されました。
・日本のマザーズ、ジャスダックを足したような市場です。KONEX市場
成長初期段階にある中小企業が中心です。
・2013年7月に開設された新興市場、機関投資家および一定額以上の資産を運用する個人が参加可能です。
(データ From KRX HP)
今回の分析は最新速報の2015年1Qではなく、2014年4QのIR資料に基づいて作成していますので、最新情報からは多少の漏れがあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。
サムスン電子の事業は大きく3つの部門に分かれます。
1つ目がCTVやモニター、プリンター、冷蔵庫などを生産するCE部門。
2つ目がスマートフォンなどのHHP、パソコンなどを生産・販売するIM部門です。
3つ目は部品産業として半導体部門とディスプレイパンネル部門に別れるDS部門です。
CE:
Black Friday など、年末の需要上昇で北米と欧州市場の需要大幅増加、プレミアム製品強化などの取り組みで売上UPしています。しかしながら、CTVの販売価格の下落、前期の低需要影響(エアコン等季節製品が涼しい夏で需要早期低減)で対前年同期比では成長はありません。
IM:
スマートフォン業界の競争激化で対3Qでは急激にDOWNしています。競合他社のApple、中国XIAOMI新モデルが同時期に発売されています。旧モデルの価格低下などの取り組みで対応を予定しています。
DS:
半導体事業は、PCやサーバ産業の年末オンシーズン影響
高容量SSDなど、高付加価値商品の販売が増加
10ナノメートル級への製造転換、よってNAND型製品の収益率上昇
→4年ぶりの最高実績を記録しています。
DP:
TV Panel など、年末需要効果で大幅UP
プレミアム製品強化でUP
*先日2015年Q1の決算暫定発表
サムスン電子が4月7日に2015年のQ1の暫定業績を発表しました。(今年の1月から先月までの四半期の)決算によりますと、売上高は47兆ウォン(日本円でおよそ5兆1500億円)で、去年の同じ時期に比べて12%減少し、営業利益は5兆9000億ウォン(日本円でおよそ6500億円)で、31%減少する見込みです。
しかし、不振だった近年の業績や予想業績に比べると、2014年第Q2以来3四半期ぶりの高水準で、株価が上がるなど市場からは好調として見られています。
現在部門別の数値は公開されていませんが、回復の要因には半導体の堅調な売り上げと、GalaxyS6やS6エッジといった携帯の新製品発売が持ち直したことが挙げられます。
今後のQ2業績もスマートフォンの新製品発売やメモリ事業の年末年始需要効果によってQ1を上回る水準で推移することが予想できます。
スマートフォン・タブレッド&パソコン部門売上高比較
スティーブ・ジョブズの死後、Iphone5Sなどの製品への評価が高くなく懸念と期待を同時に浴びていたアップルですが、Iphone6の成功で更に売上利益ともに続伸していることが分かりました。
世界的に人気の高いアップル製品ですが、特に中国市場での存在感が増しており、前年対比売り上げは70%上昇、欧州全域の売上と同水準まで伸びています。
アップル社が多少足踏みしていた時期にサムスン電子や中国のXiaomi(低価だが優れたデザインと機能で急成長してきた)社が急速に成長したというのは事実ですが、4Q時点ではアップルとの差は以前よりも広がっている印象です。
サムスン電子はモバイル機器の完成品ではアップルと競合していますが、部品単位では半導体事業がiPhoneにチップ提供しており協力関係にあります。後ほど解説しますが、チップメーカーとしては世界屈指の実力と収益規模を誇っており、最終的にはアッセンブリメーカーではなく部品メーカーとして生き残る術もあるように感じます。
メモリー&半導体事業比較
両社とも売上は順調に成長しています。事業規模はサムスン電子が3倍近く大きく、事業の範囲も異なるために単純に比較することは難しいと思います。
また半導体部門の製品は電子材料・部品であり、完成品市場の影響を強く受けます。チップビジネスで東芝が10%を超える利益率を計上、サムスンは20%近い実績を残しており、薄利多売の市場と考えていたので驚きました。
両社の技術戦略ですが、サムスン、東芝ともに10,15nmのファインプロセス、3次元の要素技術開発を行っています。今後、サムスンは高容量製品市場で更なるポジションの確立、東芝は車載マーケットでのシェア拡大が勝敗の分かれ目になってきそうです。
サムスン電子の平均年収は2年連続で1億200万ウォン(現在の為替で 約1千108万円)です。韓国では年収水準もトップクラスです。韓国の従業員平均年収と比較すると、最も高い40代男性平均の2倍の金額であり、非常に高い水準であることが分かります。
男女別にみると3,800万ウォンも差があり、韓国でもビジネス社会における男女の給与の差は現実に存在するということが分かりました。
一方、対競合を見ると、LG電子は、2014年度の平均年収が6千800万ウォン(約739万円)、サムスンの6掛け程度であり、大きな差があることがわかりました。
ちなみに日本の総合電機メーカーの平均給与は、東芝(811万円)、日立製作所(827万円)、パナソニック(691万円)、ソニー(885万円)、三菱電機(746万円)、シャープ(600万円)です。サムスン電子は日本の同業他社と比較しても相当に高水準の報酬体系を持っていることがわかります。
サムスンは、採用の入口の段階で自社専用試験を用い、その準備のために塾の講義があるほど韓国国内では圧倒的な人気を誇ります。国を代表するグローバル企業であるということも大きな理由だと思いますが、数字でわかる高い年収も、このような地位の要因になっただろうと思いました。
(データ From Donga News、2015/4/1)
近年売り上げが下落しているIM(スマートフォンなど)部門を今後どのように成長させていくか(これ以上落とさないためにどうするか?)が課題と考えます。
スマートフォンなどのコンシューマー商品は積極的なマーケティングを展開し、高額な広告宣伝投資が必要です。またコモディティ化するスピードも速く、現状営業利益は低調です。
またこれまでは打倒アップルiPhoneを基軸に事業戦略を推し進めてきましたが、中国Xiaomi社など圧倒的な価格競争力を持つ企業もすぐ後ろから追いかけてきており、自社をどのようにマーケットで位置づけ製品を投入していくのかも検討が必要です。
※最新の決算報告では、IM部門で改善が見られたようです。詳細の資料は未発表です。
円安や競合他社(アップル、東芝)の新商品発売で韓国企業が打撃を受けたという記事などは多く目にしてきましたが、韓国のトップ企業の実績を調査することでその影響を実感することができました。
私は韓国出身ですが、韓国企業と海外の企業を数値で比較したことは初めてで、リサーチしながらもすごく面白いと思いました。
韓国企業と海外の企業は決算書やIR情報の書き方などが異なり、混同してしまうことも多々ありましたが、グローバルビジネスの難しさをほんの少し覗く経験にさせて頂けたと思いました。
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