2013/10/15
4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳定年制度に移行する会社が増えています。
当社でもいくつかのクライアントの人事制度設計をお手伝いしており、このシニア社員問題の取扱いについて様々な角度から情報を取得しています。
各社の取組に対していくつかグループ分けすると、富士電機のように数年前から選択定年制度を運用している企業があれば、ダイキン工業のように希望者の雇用延長を65歳にする企業、サントリーホールディングスのように定年そのものを65歳に延長した企業などをカデゴライズすることが出来ます。
1.選択定年制度を運用している企業
富士電機のように選択定年制度を運用する会社は究極の個別対応を行っており、対象となる1人1人で給料のパッケージは変わってきます。
詳しくは会社HPを見て頂くとよく分かりますが、60歳~65歳まで6通りの定年を設定することが可能であり、60歳以降はおおむね現処遇の60%レベルの処遇で給与・賞与を支給するとあります。
報酬評価制度という視点で考えると、日系大手製造業に多い職能資格的な人事制度を運用すると、富士電機のように離職率の低い企業は高齢者/長期勤続者の職能資格が高いために給与が高止まりしてしまいます。
また仕事内容が大幅に変わる人(ライン長からスタッフへ変更)、変わらない人(定年後もライン長のまま)も一律に給与カットとなるために、職場のモチベーション維持に課題を抱えてしまいます。
しかし富士電機は職能資格ではなく、仕事/役割給を運用しており、年功的に給料は上がることはなく、また仕事内容が変わらなければ基本的には処遇は変更なしという、ある意味では非常にフェアな制度が現状稼働しているようです。
この制度運用の中で定年延長も取扱うために、「仕事=報酬」という明確で分かりやすい基準が(人によってですが)65歳まで延長される形になります。
今後課題となるのは、現在500‐600名の60歳以上の社員が増加した場合に、「あくまで個別に対応し続けるのか」という点でしょうか?
2.希望者の雇用延長を65歳にする企業
ダイキン工業のように雇用延長を65歳まで延長する会社は、おそらく数としては多いのではないかと思います。
ダイキン工業は2001年に希望者全員を65歳まで再雇用する制度を比較的世の中一般よりも早く導入し、2012年度には666名が在籍しているようです。
この制度は一旦60歳で退職扱いとなるので、再雇用時の仕事内容に合わせて給与を定め、65歳までそれを延長することになります。
ダイキン工業の報酬評価制度がどのような設計になっているのか知りませんが、60歳以降は仕事/役割給を運用することになっているようです。
仮に60歳までは職能資格制度を採用していた場合には、60歳までと、60歳以降で報酬評価制度が全く異なるために、評価者の目線が合わない、という課題はありそうです。
また、これまで63歳だった雇用延長を65歳に延長する場合には、会社の報酬総額は増加するわけですので、純増を認めるのか、どこか別のところを調整するのかは議論が出てくるものと思います。
3.定年そのものを65歳に延長した企業
さて、最後にサントリーHDのように単純な定年延長を行った企業については、経営が「人件費総額」をどのように捉えるのか?によって各年代のモチベーションが変わってきそうです。
人件費総額を固定した場合には、60歳~65歳まで5年分の報酬総額をどこかで調整しなくてはいけません。私が知りうる限り、単純にこれまでの職能資格の賃金カーブをこれまでよりも低く再定義する企業が多いです。そして若い世代で減らした賃金を年配者に分配する形式を取ります。
この場合、50代以降の社員にとっては特に努力せずに定年延長され、また報酬も維持される訳ですので、非常にハッピーな状況が生まれます。
一方で若手中堅社員にとっては賃下げが行われ、明らかにしわ寄せが回ってくるために、悩ましい状態が生まれます。
今後は更に高齢化が進み、公的年金支給年齢を65歳から更に上げなくてはいけなくなります。
68歳、70歳支給開始という時代は遠くない将来やってきます。
そうなった場合には、再度定年を65歳から70歳に更に引き上げるのでしょうか?
そしてその場合も企業人事部は、賃金総額は変えずに低いカーブで長期雇用するコンセプトを維持し続けるのでしょうか?
シニア世代にとっては退職するはずだったが雇用が維持されて給料が出ることに繋がり、若者・中堅世代にとっては単純な賃下げ・・・
定年延長は、世代によって受け止め方は全く異なってきます。
そろそろ年齢という基準を考慮から外すことが必要なのではないでしょうか?
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