Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

セクハラ野次の鈴木章浩議員が議員辞職するわけにはいかない理由について考えた

 

セクハラ野次議員が特定されました

連日報道されている、都議会のセクハラ野次報道。昨日鈴木章浩氏が記者会見し発言を認めて謝罪した。自民会派をこの日離脱したが、議員辞職はしない考えを示した。

東京都議会で晩婚化対策を質問していた塩村文夏(あやか)都議(35)が「早く結婚した方がいい」とヤジを浴びた問題で、自民党の鈴木章浩都議(51)が23日、記者会見し、発言を認めて謝罪した。自民会派をこの日離脱したが、議員辞職はしない考えを示した。(asahi.comより)

鈴木議員の報道では僕の実家の目の前の大田文化の森バス停(元大田区役所)近くにある後援会事務所が度々テレビ報道に登場、ご近所さんがインタビューされていた。その内私の家族も登場するのではないかと思ってしまう。
さて、今回は鈴木さん(辞職すると議員ではなくなるので敢えてこう呼ばしてもらうが)が辞職できない理由を経済的観点から考えてみたい。

鈴木議員のバックグラウンド、家業と収入

鈴木さんのwikiは今回の事件で作成され、プロフィールを拝見すると、1962年生まれの51歳、青山学院大学の法学部に進学したが、在学中に実父が他界し、家業のクリーニング屋「光伸舎」に入社した。1999年に大田区議会議員に初当選し、2007年から都政参画し、現在当選3回である。

家業のクリーニング店である光伸舎について調べてみると、以下のような情報が確認できた。年間売上3000万円程、役員と従業員1名の小さな所帯、池上8丁目に1店舗で、他に店舗展開しているようには見えない。代表は別の方(兄弟でしょうか?)が務めており、零細企業であることが確認できる。

有限会社 光伸舎
〒146-0082 東京都大田区池上8—10—13
代表者 鈴木 康之

コード :33-601090-7
会社種別:非上場
電話番号:03-3751-4970
設立  :1985年 9月
業種名 :普通洗濯業
資本金 : 3,000 千円
従業員 : 1 名
取引銀行:三菱東京UFJ(池上)
仕入先 :ダイヤ商事,倉島商店
販売先 :個人
業績  :
決算期  売上(百万円) 利益(千円) 資本構成
2013. 8   30
2012. 8   32
2011. 8   40
順位  : 業種別売上高  全国    2154社    1483位
県     281社     175位
評点  :D4

クリーニング店の1店舗当たりの平均的な売上高や利益が分からないので、日本クリーニング新聞を見ると、全国平均だと1店舗329.3万円であった。ただ、この数字は全国津々浦々の平均値であるので、もう少し踏み込んで調べてみると白洋舎のクリーニング部門は少し古いデータ(2010)だと1店舗当たり売上高2900万円/利益135万円、きょくとう(2013年度)は933万円/61万円だった。

会社名 売上高 利益 1店舗 売上 1店舗 利益 店舗数
きょくとう ¥7,100,000,000 ¥470,000,000 ¥9,329,829 ¥617,608 761
白洋舎 ¥24,517,000,000 ¥1,149,000,000 ¥28,843,529 ¥1,351,765 850

鈴木さんの稼業は白洋舎1店舗くらいの売上となる。個人商店としてはまずまず善戦されているのかもしれない。ただ利益規模についてはクリーニング工場で一括集約して処理するような効率的なオペレーションではないだろうから、恐らくこんなに出ていないことが予想される。(最も非公開なので確認のしようがないが)

さて、売上3000万円で原価のちゃんとかかる事業体であった場合代表者の報酬は高く見積もっても600万円程度と予想される。ひょっとしたらもっと低いかもしれない。一方で都議会の議員報酬は約1660万円、政務活動費(政務調査費)を含めると約2400万円となる。ここから秘書の人件費や議員活動のための取材費や活動費(鈴木さんの場合は尖閣上陸費用とか)などを差し引くとほとんど残らないという議員もいるようだが、与党自民党の都議会トップ当選の鈴木さんにはそれなり助成金も割り振られると思われるので、相応の生活水準にあるはずだ。

家業のクリーニング店では事業規模や収益率を考えると、2400万円もの役員報酬を取ることは難しく、鈴木さんの家計は議員報酬で支えられている。お子さん3人いらっしゃるので、これからの学費も考えるとこれからますます家計が圧迫されていることが予想される。
そんな中、生活基盤である議員報酬をおいそれと手放すわけにはいかない、鈴木家の家計が崩壊しかねない。謝罪前日のインタビューでは「議員辞職するべきだ」と言っていたが、「議員辞職は否定」することに至ったのだが、ここまで踏み込むと52歳の3児の父の弱さが見え隠れする。

さて、この野次問題については、どこを落としどころとするのだろうか。
一般企業に置き換えると、興味深い。
全社総会で新人1年目の女性がプレゼンし始めると、ベテランのオッサン管理職が「早く結婚しろ」、「産めないのか」と罵声を浴びせ、新人が泣きながらプレゼンを続けたという事案だ。
普通の会社だと、そのオッサンは即座に懲戒解雇になり、恐喝で刑事事件に発展しかねない。

しかしながら東京都議会というのはおかしな場所で、そういった罵声や怒号が当然だと考えるオッサンに支配され、議会の華とコメントする人もいる。ここらでもうそういった考え方は社会では通用しないのだ、もう野次は全面的に禁止して、人の話は黙って聞こうという当たり前の方向に切り替えるべきだろう。

私も30歳、オッサン化していないか毎日気を付けよう。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。