2016/03/19
少子高齢化が進む現代、シニア世代の労働人口は増加の一途を辿っている。医療の発達により元気なシニア世代が増加したことにより、「生涯現役」を望む「アクティブシニア」が活躍する時代が訪れている。また、年金受給年齢の段階的な引き上げにより、収入面においても、まだまだ働く必要性のあるシニアも増加しているという側面もある。
ここで、データをみてみよう。
定年退職後に働いている人の割合は全体で47.6%であった。パートで定年も関係なく継続的に仕事をしている女性も含まれているが、定年後も仕事を継続しているシニア世代は全体の約半数にも及ぶことがわかる。
全体の内、特に「再雇用契約をして同じ会社やグループ会社」で働いている人が半数以上(56.6%)となった。定年を迎えた際、定年退職という区切りをあまり感じずに、「このまま継続して働こう」という人が多いと思われる。また「定年退職後も働いている」の内訳は以下のとおりである。
- 「再雇用契約をして同じ会社やグループ会社で働き始めた」
- 「勤務延長をして同じ会社やグループ会社で働き始めた」
- 「ある程度期間をおいたあと、別の会社で働き始めた」
- 「自ら起業、起業の準備を始めた」
- 「故郷や別の場所に移住して仕事を見つけた」
- 「その他」
しかし60歳を境に働いている人の割合は減少している。その結果が図2である。
60代前半では55.2%と約半数が働いているが、60代後半になると35.4%、70歳以上になると14.9%と、年を重ねるに連れて割合は減少している。
これは健康面で働くことができなくなる、また時間的なゆとりを大切にしているという傾向があると言える。再就職をしても、継続して仕事ができるのは定年後10年以内というのがひとつの目安になりそうだ。
定年後に「別の会社で働いた」、「起業した」という意見もあるが、年齢的に新たな場所で仕事をすることは、条件や年齢制限などで非常に難しい。理想の働きかとを見つける上でも、定年前から情報を収集し、早めの行動を心がけよう。
上記では実際に働いている人の割合を見たが、何が理由で働くことを決めたのか。働きたい理由とその順位は以下の通りである。
- 「働くのがあたりまえだと思うから」 46.8%
- 「家計・生計のため」 46.7%
- 「自分が自由に使えるお金を得るため」 43.7%
- 「健康維持のため」 43.6%
- 「社会や人とのつながりを実感できるから」 42.0%
働きたい理由1位は「働くのがあたりまえだと思うから」の46.8%となり、定年退職後も「このまま働こう」と思う人が多いようだ。5位以下には「社会や人とのつながりを実感できるから」「社会との接点を持っていたいから」「社会や人の役に立てるから」などの社会的な理由が多かった。これまで長年仕事をしていた状態から、急に自由になると何をすればよいのかわからず“自分の居場所を探す”という心理も働いているかもしれない。
この理由は特に女性に多く、女性の働きたい理由の2位にランクインしている。たしかに仕事を辞めると途端に社会や人とのつながりが無くなるため、生活をしていても仕事で得られる満足感を得ることが出来ないということがあるのだろう。
その次に「家計・生計のため」「自分が自由に使えるお金を得るため」という金銭的な理由が多かった。これは、年金受給年齢が段階的に引き上げられ、RAMPと言われる、60歳定年を迎えてから65歳年金受給開始まで年金を受給しない世代が、金銭的問題から仕事を継続しなければならいという社会的事情も存在しています。
4位は「健康維持のため」の43.6%となった。しかし60歳後半から働いている人は減少していることから、健康維持のために働きたいという思いはあるが、現実的には働くのが厳しくなってくるということがあるのだろう。
上記ではシニアの約半数が働いていることがわかったが、では実際どんな雇用形態で働いているのか。60代前後半別に雇用形態を表したものが図3である。
「正社員・正規社員」32.8%、「契約社員・嘱託社員」20.7%となり、この3形態がほとんどである。
男女別にすると順位は異なり、男性の雇用形態1位は「正社員・正規社員」で46.7%、女性の1位は「アルバイト・パート」で67.0%となった。男性は定年後もバリバリ働きたい人が約半数、女性は時間的なゆとりを望む人が多いという傾向があるといえる。
60代後半になると雇用形態は大きく変わる。1位は「アルバイト・パートタイム」の50.5%で60代前半から10ポイント増加している。
企業などの雇用主は65歳までを採用条件に設定している場合が多く、このことにより雇用形態が変わる要因となっている。
2位は「正社員・正規社員」の18.9%で約14ポイント減少している。年を重ねるに連れて、フルタイムで働き収入を得るよりも、時間的な余裕を持って働きたい、もしくはフルタイムで働くのは健康面において厳しいという人が増加しているのだろう。この傾向は特に男性に多く見られ、女性は定年後から継続してパート・アルバイトで働き続ける人が多いようだ。また、年をとると職場や勤務の条件に当てはまる正社員の求人も減ってくるという現実もあるため、正社員として働くのは厳しくなってくる。
これまで働いている割合や雇用形態を見てきたが、実際はどんな働き方を望むのか。そこで男女別にシニアの理想の働き方を表したものが以下である。
【男性】
- 今まで培ってきた専門能力や知識を活用して働く 32.0%
- 給与は少ないけれどものんびり働く 28.7%
- 自分の趣味を活かした職業につく 24.5%
- 仕事と趣味の比率を半分ずつにして働く 19.5%
- パートタイムで比較的自由に働く 16.9%
【女性】
- パートタイムで比較的自由に働く 41.6%
- 給与は少ないけれどものんびり働く 29.8%
- 自分の趣味を活かした職業につく 22.4%
- 今まで培ってきた専門能力や知識を活用して働く 21.1%
- 仕事と趣味の比率を半分ずつにして働く 21.0%
男性は「専門能力や知識を活用して働く」が32.0%と最も高く、その次に「のんびり働く」が28.7%となった。また女性は「自由に働く」が41.6%と最も高く、その次に「のんびり働く」が29.8%となった。男女ともに「社会貢献したい」という想いと「のんびり働きたい」という想いが感じ取れる。
社会貢献という意味では、60歳以上の約5割がボランティア活動に参加しているというアンケート結果もある。収入がなくても、社会貢献などの社会との繋がりを持ちたいという人が多い。
働く理由として、金銭的な理由を挙げている人が多かったが、では実際どのくらい収入を得ているのか。1ヶ月の平均手取り収入額を表したものが図4である。
男性は、60代前半では平均24.9万円であるが、60代後半では平均18.8万円と約6万円下がる。これは60代半ばから雇用形態をパート・アルバイトに変える人が多く、勤務時間や日数が減るため、収入は減少している。一方女性は、60代前後半共に約平均11,12万である。女性の雇用形態は60代前後半でパート・アルバイトが多く、あまり変化していないため、収入額も変わっていない。
定年後の仕事については、「思ったより手取り収入が少ない」と感じる人が46.5%で約半数となった。いずれ健康的に働くことが厳しくなることを考えると、定年前からお金を準備しておく必要がある。また、自分はどういった働き方が出来るかを定年前から考えておくと定年後の生活が充実するだろう。いずれにしても、定年前と同等の収入を期待するのは難しいと思われる。
シニアは定年後「社会的なつながりを持ちたい」という社会的な理由と、「金銭的な理由で仕事を継続しなければならない」という、大きく2つの理由が見られた。
それぞれの目的により、定年後の過ごし方というものは大きく変わってくる。自分の目的にあった、定年後の生活ができるように、定年前に早めの計画を立てることが重要である。
特に、金銭的な理由で定年退職後も仕事を継続したい場合は、年金や退職金を考えたうえで、どういう働き方をする必要があるのかを考えることが大切である。定年を迎える前に、老後はどのような生活を求め、そのためにはどのような働き方が良いのか、また自分には働き方としてどんな選択肢があるのかなどを考えておくと、定年後に悩むことなく過ごすことが出来るのではないだろうか。
[1]dentsu NEWS RELEASE,「シニア×働く調査を実施」, 電通総研, 2015/7/2
[2]内閣府 「高齢者の就業:意識と現実」
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h18/10_pdf/01_honpen/pdf/06ksha0302.pdf
[3]財団法人 企業活力研究所, 「シニア人材の新たな活躍に関する調査研究報告書」, 2012/3
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