2016/02/26
4章では人工知能による人材紹介の現状と、ディープラーニングによる人材紹介の未来の仮説を説明しました。
では人工知能の出来ることは計り知れないですが、そもそも人工知能を「適用すべきか・すべきでないのか」という点について考えたいと思います。
そのために、そもそも人材紹介が求職者・企業に提供する価値を考え、人間と人工知能がどのように役割を分担すると良いのかを考察します。
当事者が得られない情報の提供、新たな気付きの提供
企業には採用担当者が存在し、求人媒体や人脈による採用など様々な方法で採用を行っています。また求職者も人材紹介以外にも転職をする手段はあります。
ではその中で人材紹介会社が提供できる価値は何か、人が介在するからこその価値とは何か、を考察します。
人間は創造的な仕事で提供価値の向上を、人工知能は業務の最適化・効率化を
4-2では人工知能がどのように活用されそうか仮説を立て、5-1では人材紹介会社の提供価値を考察しました。
では実際に人工知能をどのように活用するのが現実的、かつ顧客への提供価値が高くなるのかを考察します。考察するに辺り人間と人工知能の強み・弱みを見ていきます。
人間は機械と違い安心感を提供することが出来ます。
これは人材紹介において非常に重要な点であると思います。転職は人生に何回もあるわけでは無いため、求職者は「本当にこの人に任せて良いのだろうか?転職は成功するのか?」という不安を抱えています。そこで人間が話を聞き、アドバイスをすることで安心感を提供することが出来ます。
また、人間には人を動かす力があります。求職者が自ら興味のある求人を見つけても応募する勇気が出ないことがあり、また企業も今後を考えると本当はこういう人を採用したいけど決断出来ないということがあります。
そこで人間が介入することで、その選択が正しければ後押しをすることができ、人を動かす力があります。これは人間同士の信頼があるからこそ出来ることだと思います。
一方、人間は記憶力に限界があります。業界知識や動向は覚えるのに限界があるため、100%の価値提供が出来ない可能性があります。また、情報伝達にズレが生じることもあります。社内で求職者の情報を共有する際に「リーダーシップがある人」や「人当たりが良い人」といっても社員によっては認識が異なります。
この情報伝達のミスが仕事のミスに繋がる可能性もあるため、提供価値が下がる可能性があります。
人工知能は記憶力に限界が無いという強みがあります。求職者や企業にとって情報は多ければ多い程、参考にすることが出来ます。
よってあらゆる情報を記憶させておくことで、顧客への提供価値が下がることはありません。また決められた手順の作業が早いことも強みです。
コンサルタントは日程調整や求職者へのメール対応など決められた手順の事務作業が多いです。よってこれらは機械が得意とする作業であり、任せて良い業務だと思われます。
一方、人工知能には心がありません。与えられたデータに対し、計算をし、結果を出力するということが基本であり、「人がどう感じるか」「人は何を考えているのか」ということは考慮しません。よって人間は冷たいような印象を受けることがあります。また、データが全てということも弱みの1つです。人工知能はデータが無限にあれば、その中からルールを見つけたり、出来ることは多くなります。しかしデータがなければただの機械です。よってデータの取れない新しい領域といった所は弱みとする部分だと思われます。
人間と人工知能の強み・弱みを考察しましたが、こういった観点から考えると、人間は創造的な仕事を担当し、人工知能は業務の最適化・効率化を担当するのが最も良いのではないかと思います。
人間は企業に対し単なる紹介だけでなく「新たなポジションの提案」を行い、求職者に対し「新たな気付きの提供」や「安心感の提供」をします。また人を動かすことにより、予想も出来ないような「創造的なマッチング」を行います。人工知能は人間のサポート役となり「日程調整」や「求職者へのメール」、「データベースから求職者の自動検索」などを高速に処理します。また、求職者データ・求人データを基に、「能力やスキルレベルでのマッチング」、「求人の割り振り」、「期待値調整」を行います。
そうすることで、人間が人に合う時間、マッチングを行う時間を増やすことができ、また24時間365日フル稼働で動くことで提供価値を向上させます。
人工知能が普及されることにより人間の仕事は奪われると言われていますが、人材紹介は奪われることは無いと思います。
なぜなら人が介入するからこその価値が存在し、それは機械に置き換えられないからです。よって人・求人を紹介しているだけで人が介入している意味の無い紹介会社は無くなり、感動レベルでの価値提供が出来る会社が残り、成長していくのではないでしょうか。
コンサルタント1人に対し、1つの人工知能。映画アイアンマンのトニー・スタークとジャービス(主人公トニー・スタークをサポートする人工知能)が最高のパートナーであるように、コンサルタントと人工知能が最高のパートナーとなる世界が来るかもしれません。
大学4年の7月末から働き始め、約半年間お世話になりました。
ジーニアスではマッチング、営業リスト作成、スカウト業務などをさせて頂きましたが、どの業務も大変勉強になりました。
また人材紹介会社へ行くのにまだ甘い考えを持っていた私に、三上社長は人材紹介の存在価値、理想と現実を教えて頂きました。何より面談を同席させて頂いた時、人材紹介の意義を肌で感じ、絶対にやりがいのある仕事だと確信しました。ここで学ばせて頂いたことを忘れずに、4月から全力で働こうと思います。
4月からは株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーという会社で働きます。配属先は恐らく人材紹介事業部であるため、求職者・企業から信頼されるコンサルタントになれるよう日々努力していきたいと思っています。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
[1]「人工知能は人間を超えるか」, 松尾豊, 2015年3月10日初版
[2]「ITエンジニアのための機械学習理論入門」, 中井悦司, 2015年11月15日初版
[3]「Bizreach プレスルーム」キャリアトレックの概要, 2014年4月21日投稿
https://www.bizreach.co.jp/pressroom/press/20140421.html
[4]「ブレインパッド ニュースリリース」TalentBaseの概要, 2015年2月19日投稿
http://www.brainpad.co.jp/news/2015/02/19.html
[5]「人材紹介業の動向、大手・中小人材紹介会社の今後とは ~過去-現在-未来から分析~」,佐藤優一, 2015年2月27日投稿, https://www.genius-japan.com/blog/satoh_final
[6]「第7回「人工知能の進化が生み出す、2025年の採用活動とは」」, 藤野貴教,
2016年2月5日, http://dairiku-soken.jp/opinion/1007.html
[7]「人工知能の未来~ディープラーニングの先にあるもの~」, 松尾豊, 2015年6月3日, BLLセミナープレゼンテーション資料
①「探索」「推論」の時代
人工知能という言葉は1950年代から使われ、研究されてきました。
この時代では主に「探索」や「推論」が研究されていました。推論の処理方法は探索と同じため、探索の概要を説明します。
例として、下記の迷路を用います。
この例において、左が迷路で、右が迷路のルートを枝状に表した探索木(考えられるパターンを木の枝のようにして表したもの)です。
この迷路を機械が探索するときには、スタート→ a → b(行き止まり) → a → c → d(行き止まり) → c → … といった具合に探索していきます(探索方法としては深さ優先探索や幅優先探索等がありますが省略します)。行き止まりがあったら前の分岐に戻り、違うルートを探索するといった具合です。
昔のドラクエのようなRPGで宝箱を探す動作に似ています(宝箱を探すのにとりあえず1階を全て探してから、2階を探しに行こう!みたいな)。
この探索を用いた身近なものとしては、将棋やチェスなどのゲームがあります。
例えば将棋の場合、CPUと対戦する時、「なぜあんな風に打てるのか?」と思ったことはありませんか。これは将棋の駒の打つパターンを探索木で全て考え、どの手を打つと相手に勝てそうかを高速に計算し、次の手を決めています。以前「CPU棋士VS人間棋士」というのがありましたが、結果としてCPUが勝ちました。勝因はパターンが膨大な量ではありますが限定されているため、高速処理が出来るCPUの方が最適な手を打てるからです。
限定した空間において、探索は有効であり、人間より高速処理が出来る機械にとっては得意分野であると言えます。
しかしこの探索はゲームのようなパターンを計算する問題は解くことが出来るのですが、「実際の問題を解決することは出来ない」ということがあります。
「商品Aと商品Bのどちらを開発する方が売上は伸びるか」「ある人が病気になった時、最適な処方薬は何か」など、様々な問題は探索により解決することが出来ません。
よって多くの問題を解決するには知識が必要となりました。なぜなら人間も何か問題を解決するときには、過去に学習した知識を活かしているためです。
②機械が知識を獲得
探索では実際の問題が解決できないということがあり、次に機械に「知識」を入れることが始まりました。この知識の獲得により、機械が解決出来る問題は広がりました。
具体例として、「ある人が病気になった時、最適な処方薬は何か」という問題を見ていきます。
医者は患者の状態や質問に対する受け答えから病気の原因を特定し、それを治すための薬を処方します。これは医者の持っている豊富な知識を基に、原因となる可能性のあるものを探っていくようなイメージです(お腹の調子は大丈夫なら、胃腸炎ではなさそうだな・・・といった具合)。
この医者が持っている知識を機械に入れ、医者が質問するのと同じように機械が質問を行うことで、医者に近い診察を行うことが出来ます。患者は機械からの「熱は何度ありますか?」「お腹の調子は悪いですか?」などといった質問に答えることで、機械が原因を特定し、予め用意された処方薬を提示することが出来ます。
しかしこの知識を入れるということには様々な問題があります。
まず知識を専門家から引き出し、管理する必要があります。
また知識はどのくらい必要なのかということも決める必要があります。
また、そもそも機械は知識を理解はしていない(「お腹」を「お腹」という記号で認識している)ため、人間が定義をする必要があります。お腹とは何で、どこからどこがお腹なのかという定義を詳細に行わなければ、機械は判断することが出来ません。
また、それぞれの単語の関係性を表す意味ネットワークのような記述により知識を表現しようとしましたが、これも人間が行うには限界があります。
【1ページ目】1.はじめに/2.各章のポイント3.人工知能(AI)の現在
【2ページ目】4.人材紹介における人工知能の適用
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