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人材業界2014年3月期決算まとめ、リクルート続伸、ディップ復活、リブセンス利益率急落

人材業界、2014年は全体で120~130%成長

昨年は「人材業界の決算が出そろいましたね、リクルート1兆円越え、業界全体が復活 」というタイトルで振り返りをしましたが、今年も決算発表の時期を迎え、人材業界の2014年3月期の決算が概ね出揃いましたね。
今年は決算発表している人材会社の売上合計が2兆円を超えました。昨年度より3000億円近く伸びており、業界成長15%という下駄を履いた中での各社の動向を振り返りたいと思います。ちなみにパソナは5月決算のために反映されていません。

主要なトピックを纏めてみました。

1.リクルート続伸、10月上場に弾みのついた決算

売上1,191,567百万円、営業利益117,438百万円

人材業界比較表は今年もインターンの菊池君と作成したのですが、最初にリストが出てきたときに「リクルートの売上と利益が1桁違っているんじゃないか?ちゃんと百万円単位になっている?」という突っ込みをしてしまいました。(もちろん合っています。)
売上が1兆円、上場・大会社の人材会社の売上の50%はリクルートが占めるという恐ろしい世界に突入しています。2位でインテリを買収したテンプHD(売上3500億円)にトリプルスコアをつけてぶっちぎりのNO1を今年も継続しています。
恐らく未上場含めても売上の25%程度はリクルートなのだろうと思うのですが、そろそろ独禁法を適用してもいいのではないか?という水準となっています。

同時に人材業界というのは結局のところリクルート、パソナ、テンプスタッフという老舗が規模を持っており、その後勃興したグッドウィル(消滅)、クリスタル(グッドウィルと統合)、フルキャスト(細々と生き残る)、フジスタッフ(ランスタッド傘下)はことごとく消滅か存在感を無くしてしまったので、先行者利益の大きな業界だと感じます。

リクルートグループの決算は個別に「リクルート決算発表 売上高1兆1915億円で過去最高」でまとめています。

2.テンプHDはインテリ買収効果で売上続伸

売上362,489百万円(対前年146%)、営業利益18,597百万円(対前年189%)

テンプHDの決算にはインテリ買収効果が約900億円効いています。また全ての事業がプラス成長しており、非常に良い1年であったことが予想されます。
また、決算資料を拝見すると、テンプの人材紹介事業とインテリのキャリア事業は切り分けており、この点は業界人としては高評価しています。買収後に狩猟民族(インテリ)と農耕民族(テンプ)を無理やり統合すると、買収されたインテリ側の人材が流出してしまう結果になってしまうと危惧していましたが、今のところそのような心配は杞憂に終わりそうです。

3.求人媒体を持つ企業が大躍進、売り手市場の恩恵を受ける

今回の人材業界決算まとめで目立った躍進が確認できたのが、求人媒体(バイト、正社員)を持つ企業です。実は私が今回最も衝撃を受けたのがバイトルドットコムのディップです。
既に奥さんになってしまって、バイトしてるイメージは持てない上戸彩をいつまで引っ張るのかは分かりませんが、売上142%成長、リーマンショック以降がひどすぎた面もありますが、利益6倍と復活しています。

他にもリブセンスは売上188%、利益140%、@Typeを運営するキャリアデザインセンターは売上128%、利益140%、エン・ジャパンは売上123%、利益123%とバイト、中途媒体企業は好調です。
確かに「牛丼屋がバイト不足で閉店に追い込まれる」ような大変な売り手市場が到来し、求人数も掲載期間も広告単価も上昇しており、外部要因が極めてプラスに働いたと評価できると思います。

4.リブセンスは営業利益率が大幅に低下、ダウントレンドが始まったかもしれない

最後にリブセンスです(決算資料はこちら)。売上4,256百万円、利益1,584百万円、利益率37.2%と通常の会社であれば素晴らしい決算内容ですが実は前年は49.9%もあり、利益率が13%も悪化しています。

特に私が気になったのは1年前から約3倍に増加した広告費と2倍強となった人件費です。昨年に比べて販管費は2倍となり、四半期利益は物凄いペースで下り坂を転げ落ちています。
恐らく人件費はエンジニア中心の採用をしてSEO内製化や良質なコンテンツ作りに投資をしたものと思うのですが、何らかの理由でグーグルにペナルティを食らってSEO失敗、しょうがないので広告やTVCMで集客している、結果としては利益率大幅悪化という1年だったのだと思います。

5.フルキャストに派遣法改正爆弾直撃

フルキャストの決算は売上17,462百万円(対前年47.3%)、利益338百万円(対前年19%)と極めて厳しい決算を迎えています。フルキャストといえば、私が就活していた頃は物凄い勢いで成長している企業の代名詞でもありましたが、この決算を拝見すると「今は昔」の感が溢れてきます。(決算期変更の影響を鑑みたとしても)

フルキャストの大幅減収減益は派遣法改正の影響が大きいと思います。フルキャストは元々短期業務支援事業(要するに日々派遣に近い短期派遣)を主事業としていましたが、派遣法改正に伴いこれまでのビジネスモデルが破たんし、短期派遣事業から「アルバイト紹介」及び「アルバイト給与管理代行」へ移管せざるを得ない状況となりました。

人材業界においてはこれまでも、偽装派遣や偽装請負企業への業務停止命令や営業禁止などかなり重いペナルティが課せられてきました。このような問題が起こると法改正が行われたり、当局の取り締まりが強化され、業界全体のコンプラ強化が実現されてきました(まぁ書類上ですが)。

フルキャストはコンプラという点では、極めて全うに派遣法改正に向き合ったわけですが、主たる事業が法改正で消滅してしまうという厳しい1年を過ごすこととなりました。改めて人材業界は紹介はともかく派遣は免許事業なのだなーという認識を持ちました。

ではでは!皆様来期も素晴らしい決算を迎えることを期待しております。


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三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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